2004.07.07

誤字等No.092

【送れてすみません】(誤変科)

Google検索結果 2004/07/07 送れてすみません:1,600件

日本人は、時間に厳しい国民です。
常習的に遅刻を繰り返すような人は、学生ならともかく、社会人としては通用しません。
そのため、すべきことが遅くなってしまった場合、まずは謝罪することが礼儀となります。

それはWEB上でも例外ではありません。
「返事」や「報告」や「お礼」などが遅れたことを「おわび」する文章が、大量に生み出されています。
その表現も、「遅れてすみません」「遅れてごめんなさい」「遅れて申し訳ございません」などなど色々あるようです。
これだけあれば、その中にこっそり誤変換が混ざっていても、ご愛嬌というものでしょうか。

ここでは、それらの誤変換の中から、「送れてすみません」を選んでみました。
すみません」という軽めの謝罪表現を使っていることから、個人的な文章で多く見かけることができます。
掲示板への書き込みやネットオークションの評価コメントなどが代表的ですね。
返信が送れてすみません」…送れなかったのなら大変ですが、無事送れたのなら問題ありませんね。
謝る必要など、ないはずです。

おくれて」と読む漢字表記は、他にもいろいろあります。

後れてすみません」…流行に後れていることを恥じているような印象ですが、このくらいなら許容範囲でしょうか。
贈れてすみません」…謝るくらいなら、贈らないでください。

ここまでは、実在を確認しました。
このあとは、「おく」だけを単体で漢字化したパターンです。

億れてすみません
奥れてすみません
置くれてすみません

どれも、意味不明ですね。
さすがに、ここまで極端な誤字は見つけることができませんでした。

送れて」程度の誤変換があったとしても、その意味をわざわざ曲解するような人はいそうにありません。
その点では、特に不都合が生じるようなミスではないとも言えます。
指摘されれば、ほとんどの人が即座に自分のミスに気付くことができるでしょう。
他の科の誤字等のように「思い込み」によって間違いを繰り返すようなことにはなり得ません。
一方で見方を変えれば、「ただのミス」だからこそ、書いた人の「不注意」を如実に表してしまう誤字等ともなるわけです。

遅れて」が「送れて」になっていても、事態が深刻でなければ「笑って済ませられる」程度のものでしょう。
しかし、それが「平身低頭」クラスの謝罪だとしたらどうでしょうか。
「ご連絡が遅れてしまい、誠に申し訳ございませんでした」という丁寧な謝罪文のはずが、実は「送れて」になっていたとしたら。
本当に心から謝罪する気があるのか、口先だけのごまかしではないのか、といった疑いを招きかねません。

「それだけ慌てていた」という演出に使うことも可能かもしれませんが、あまり良い手とは言えませんね。
申し訳け」の回でも同様のことを書きましたが、謝罪の言葉で「自分の意志」を示すつもりならば、言葉ひとつといえど大切にしたいものです。
その返信を送る前に、もう一度、文章を読み直してみませんか?

[実例]

日本人とは、かくも「誤変換」に弱いのでしょうか。
このような「誤変換」が原因と思われる誤字等の品種を、「誤変科(ごへんか)」と命名しました。

[亜種]

贈れてすみません:2件
送れてすいません:527件
贈れてすいません:8件
送れてごめんなさい:744件
贈れてごめんなさい:9件
送れて申し訳ありません:1,800件
贈れて申し訳ありません:4件
送れて申し訳ございません:487件

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