2004.08.14
誤字等No.104
Google検索結果 2004/08/14 完壁:4,420件
今回は、「で ん」さんからの投稿を元ネタにしています。
「かんぺき」を漢字で書いてください。
と言われたとき、現代の日本人で、どれだけの割合が正しく書けることでしょうか。
おそらく、かなりの人が「完壁」と書いてしまうのではないかと予想されます。
今回の表題は、それくらい日本人の間に根付いていると思わせる誤字等です。
「完全無欠」を意味する「完璧」は、十分に定着した平易な日本語のひとつです。
義務教育を終えた程度の教養があれば、読むことに不都合はないことでしょう。
その意味を誤解している人も少ないものと思われます。
それでも、「手書き」で漢字表記できるかとなると、別問題となります。
「完壁」は誤字としては「ありふれた」部類に入りますので、その解説も方々で見つけることができます。
ということで、これまでは「客間」に飾るだけにしておきました。
私などが考察するまでもなかろう…と思っていたのですが、「目安箱」に「採用して欲しい」というご意見が多数寄せられましたので、考えを変えてみました。
「代表的な誤字」のひとつであることは確実ですので、誤字等の館の仲間として、加えておくことにします。
さて、「璧」と「壁」は、確かによく似た漢字です。
「完璧」と「完壁」が並べて書かれていても、その違いに気付かないこともあるでしょう。
そんな両者ですが、その「知名度」には格段の差があります。
「壁」が「かべ」として普通に使われる言葉であるのに対して、「璧」が単独で日常会話に登場する機会などほとんどありません。
現代の日本で、「璧」とはどういったものなのかを知っている方が少数派でしょう。
「璧」という漢字の存在そのものが、知られていないかもしれません。
そして、「壁」の音読みは「へき」ですので、「完壁」を「かんぺき」と読むこと自体に不自然な点はありません。
ここまで条件が揃えば、「かんぺき」を「完壁」として記憶してしまう人がいるのも無理のない話です。
しかし、そのままではこの言葉の「真の意味」を知らずにいることとなります。
「璧」の下半分が「土」ではなく「玉」であることには、重要な意味があるのです。
なぜ、「壁」ではなく「璧」なのか。
それは、この言葉の「由来」を知ると理解することができます。
「完璧」は、「杞憂」や「矛盾」などのように「中国の昔話」から生まれた「故事成語」です。
その元となった逸話を知っておけば、漢字表記に迷うことがなくなります。
それは一体どのような話なのでしょうか。
ここで説明しても良いのですが、故事の内容を紹介しているページはたくさんありますので、そちらに譲ります。
私としては、比較的詳しく書かれている「駱駝書房」をおすすめしておきます。
天下の宝玉「璧」に傷を付けることなく、完全な状態で持ち帰る。それが語源でした。
完全な状態の「璧」と、見事に使命を果たした「完全な仕事」の両方を指して「完璧」と表現するようになったと言えます。
まさに「璧」が中心となった物語。「壁」ではまるっきりのお門違いですね。
この故事に登場する「和氏の璧」という言葉自体も、成語と呼べる地位を築いています。
無論「完璧」とは比べるべくもないマイナーな言葉ではありますが、その生まれに関するエピソードは、「真実」が世に認められることの難しさを語っているとも言われています。
そんな「和氏の璧」について書き記したページの中には、当然のように「和氏の壁」という誤表記が紛れ込んでいました。
由来となった故事に言及しておきながら「壁」と書いているようでは、情けないですね。
ところで、似字科の誤字等には「双方向性」があることは、以前にもお伝えした通り。
「壁」の代わりに「璧」と書いてしまう変わり者も、世の中には実在するのです。
かなり少数ではありますが、「璧紙」や「バカの璧」などを確認できました。
どう考えてもOCRを使っているようには見えないページなのですが、一体どのような経緯でこんな誤字等が生まれてくるのでしょうか。
なんとも、不思議なものです。
日本人とは、かくも「似たような字形」に弱いのでしょうか。
このような「似たような字形」が原因と思われる誤字等の品種を、「似字科(じじか)」と命名しました。
完癖:9件
完碧:38件
感璧:10件
かんべき:21件
カンベキ:29件
和氏の壁:40件
璧紙:10件
璧板:14件
土璧:10件
バカの璧:6件