2006.01.22

【誤字等の談話室 42】

誤字等の館 (ごじらのやかた) に寄せられる読者様のコメントに対して館主が答える「誤字等の談話室」、その第42弾です。

[090]

「誤字等の館」楽しく拝見しておりますが、「汚名挽回」について、少し気になる点がございます。

一般的には、誤用とされることが多いのですが、必ずしも「汚名挽回」は間違いではありません。

「挽回」と言うものには、「取り返す」という意味のほかに、「元に戻す」や「回復」という意味も含まれます。

「汚名を着せられた状態を挽回する(取り返す)」のでは確かに間違っています。
しかし、「汚名を着せられた状態から挽回する(元に戻す)」とすると、間違いではありません。

以上、検討をお願いします。 

一般に「汚名挽回」を使う人たちの心理は、そのようなものかもしれません。

が、冷静に考えてみましょう。
「汚名を着せられた状態から挽回する」を「汚名挽回」と縮めているわけですよね。
かなり、「無理矢理」な省略だとは思いませんか?
その意味なら、せめて「汚名から挽回」とでも書いてほしいところです。

多くの言葉を補わなければ正しく意味が伝わらないのであれば。
誤解されて伝わってしまう危険性の方が大きいのであれば。
それは、「コミュニケーションの道具」としては失格です。
このような観点からも、「汚名挽回」にこだわる価値を私は見出せません。

「言葉」は、人間が生み出した「道具」です。
「正解」か「不正解」かは、今の時点で決められている「ルール」に過ぎません。
従って、その言葉を使うだけの「必然性」があるのなら、いずれルールも変化します。

本当に重要なのは、「正誤」のみを追う単純な二元論ではありません。
「間違い」とされている一般論を疑い、「本当は正しいのではないか」と考えてみる姿勢はとても良いことです。
しかし、実際に「正しい」と主張するのなら。
ただの「理屈」ではない、他人が納得できる理由を見つけ出すことが求められます。
今のところ「汚名挽回」には、そこまでの理由は見当たりません。

以上、私なりの検討結果でした。

[091]

賀茂鶴(広島の清酒、広島の人にききましたら、清酒はにごってはいけないので
つるが正解といわれましたが、清酒のよみかたでにごる発音はありますか)

私はアルコールに弱いので、酒の銘柄もほとんど知らないのですが…
そんな私でも知っている名前として、有名どころでは「久保田 (くぼた)」がありますね。
他にも、「越の寒梅 (こしのかんばい)」「上膳水如 (じょうぜんみずのごとし)」など。
濁音の入る清酒の名前は、決して珍しくないです。
清酒の種類を示す言葉としても、「大吟醸 (だいぎんじょう)」なんて濁音だらけです。

「清酒はにごってはいけない」というのは、その人なりの「ポリシー」なのでしょう。
きっと。

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