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No84.txt

やっぱりこの件の話はしなくちゃいけないんでしょうねぇ。この件というのは、
もちろんブルボン小林氏の知人が「レース編みが趣味のかなだという人が高校の
同級生だった」と言ったという件です。

今回の私の記事を楽しみにしていた方も多いでしょうが、皆さんの期待通り、そ
れは多分私のことです。いや驚きました。ただし、趣味というよりは特技程度で
すが。小学生の頃に祖母に習ったもので、レース編みに限らず鈎針、棒針両方覚
えています。さすがに高校生の頃はやっていなかったので、果たして親しい人な
のか、それとも私の知らない所ですごく有名な話だったのか……。ちなみに鈎針
は鉛筆と持ち方が似ているので(同じではない)、残念ながら私の指にあるのがペ
ンダコなのかレースダコなのか区別がつきません。

と、ここまで編み物の話をしてしまったので、今回はWebからはちょっと離れて編
物・織物とコンピュータの関係について話をしてみたいと思います。なお、web(
Webではなく)という言葉は、織物の布という意味もあり、レース編みのように網
状のものを指すこともあります。クモの巣も「編まれた」ものですよね。単純な
構造の組み合わせが複雑な構造を生み、糸を増やせば無限に拡張できる点でWebと
編物は共通しています。

と、こじつけはここまでにして、話を本題に移しましょう。実はコンピュータの
歴史と織物とは深い関係があります。その昔、織物は当然今のように機械制御で
はなく、複雑な模様を織るためにはとんでもない労力が必要でした。

普通の織物(Yシャツの生地などに使われる平織)ならば作業は比較的簡単で、2サ
イクルで済みます。まず、縦にずらりと並んだタテ糸(反物の長辺に平行な糸)を
1本おきに選んで持ち上げ、残ったタテ糸との間にできた隙間にヨコ糸(同じく反
物の短辺に平行な糸)を通します。次は最初に持ち上げる糸を逆に引き下げて再び
残ったタテ糸との間に再びヨコ糸を通します。この繰り返しです。

これが模様織りとなると、上に持ち上げる糸が毎回複雑に変わってきます。当時
の人は織機に様々な工夫を凝らしてきましたが
(例: http://www.takata-courtrobe.co.jp/sorahikibatafukugen.htm )
莫大な労力と時間がかかることに変わりはありませんでした。

この模様織りを簡単に実現する仕組みを発明したのがフランスのジャカールです。
ジャカールはタテ糸の1本1本全てを任意に引き上げることができる装置を作り、
この制御を穴をあけた紙カードで行いました。この紙を機械に通すと、穴があい
ている部分だけ、対応するタテ糸が引き上げられる仕組みになっています。1801
年に発表されたこの装置は電子化された今でも模様織り機の基礎となっているそ
うです。この紙カードは、世界初のソフトウェアとも言えるでしょう。

その後、イギリスの数学者バベッジは、「バベッジの階差エンジン」と呼ばれる
装置を発明します。結局実現はしませんでしたが、もし実現していれば世界初の
コンピュータになっていたことでしょう。彼はこの装置の入力に、ジャカールの
織機の穴あきカード(パンチカード)の仕組を導入しました。紙にあける穴を変え
ることによって、装置をプログラミング可能にしたのです。

この階差エンジンの入力にパンチカードを使うというアイデアは、のちに発明さ
れるコンピュータにも取り入れられ、その後長きにわたり入力装置として使われ
続けられました。ある程度以上の年齢の方は、漫画やアニメなどで、穴があいた
紙テープを読み取る科学者の画を見たことがあるのではないでしょうか? 余談で
すがIBM社のOS、OS/2 Warpの「Warp」にはタテ糸という意味があり、IBMのジャカ
ール(バベッジ)に対するリスぺクトだという話もあります(今回確認できませんで
した)。