浮世絵と錦絵
よく混合して使われる「浮世絵」と「錦絵」ですが、この2つの違いについて説明します。「浮世絵」という言葉は江戸時代に描かれた風俗画全般を指します。人によって「浮世絵」の定義は違いますが、浮世絵師が手がけた本の挿絵や肉筆画も「浮世絵」に含まれることも多いです。
「錦絵」は鈴木春信が始めた多色摺り版画の浮世絵のことを指します。それ以前の浮世絵版画や、墨摺りの浮世絵版画、肉筆画は(基本的に)「錦絵」とは呼びません。
「錦絵」が「浮世絵」のカテゴリー(範疇)に含まれると説明するとわかりやすいでしょうか。
版画と肉筆画
浮世絵は版画だけだと思っている人は意外と多いですが、浮世絵には肉筆のものもあります。浮世絵版画の創始者として名高い菱川師宣の代表作「見返り美人」も肉筆の浮世絵であります。初期の浮世絵はほとんど肉筆でした。1点だけの作品ですから、ひとつひとつ鮮やかな色彩が施されました。
とはいえ肉筆は個人の依頼によって描かれるものですから、多くの庶民の目にふれるものではありません。浮世絵が庶民のものとなったのは版画技術の賜物と言えるでしょう。
現在は、現存が確認されているものが少ないこと、純粋な「日本画」との区別が難しいこと、贋作が多く、その判別が難しいこと、などの理由から肉筆の浮世絵は版画に比べて、研究者から嫌煙されがちな状況にあります。
浮世絵=版画と考えがちなのもそのせいではないでしょうか。