★カルメン
10月にトホ妻は静岡県の島田市というところで合唱に参加して参りました。曲目はビゼー作曲「カルメン」ハイライト版とヴェルディ作曲「レクイエム」。以前に「レクイエム」を唄った経験者であるということで合唱の応援要員に駆り出されたわけでございますが、「カルメン」の方は全くの未経験。公演直前の最後の練習に2回ほど加わっただけでたちまち本番という状況でございましたが、やはりああいう公演というのは実際に参加してみると、裏ではいろいろと面白いことがあるようでございます…。
対談場所:島田からの帰途・新幹線車中で
トホ妻 「あ〜あ〜…もうクタビレたよ、あたしゃ」
いわんや「お疲れお疲れ。オレが座ってるの見えた?」
トホ妻 「すぐわかったわよ(笑)その目立つ顔で一番ド真ん中に座ってんだもん」
いわんや「だって招待券がアソコになってたんだからしょうがないじゃん。でもこっちからも良く見えたぜ〜。“カルメン”の時なんか『こりゃどうも口パクだな』ってとこまでわかったもん」
トホ妻 「えッ?そんなトコまで見えた?」
いわんや「見えたみえた。“ハバネラ”のコーラスの時はけっこうチャンと唄ってる感じだったけど、最後の闘牛士の入場コーラスのトコはかなり口パクだっただろ?」
トホ妻 「実はそうなのよ(笑)。最初は“レクイエム”だけ出るつもりだったんだけど、どうしても“カルメン”にも出てくれって言うからさぁ…。2回の練習だけじゃ無理だよね」
いわんや「でも練習2回で“ハバネラ”のコーラスはチャンと唄ってたんだからスゴいじゃん」
トホ妻 「いや〜しかし、今回アタシは自分で唄ってみて改めて再認識したね。“カルメン”っつーのは、ありゃつくづく大変な傑作だよ」
いわんや「おお、オレもそう思う。特に第4幕は何度聞いてもスゴいわな、ありゃぁ。今日聞いてオレはまた感動しちまったぜ」
トホ妻 「序曲から始まってさ、ハバネラ、セギディーリヤ、ジプシーの踊り、闘牛士の歌…もうドレもコレも“シングルカット大ヒット”って感じの超名曲ばっかだもんね」
いわんや「歌手もみんな良かったよな。カルメン役のメゾソプラノはなかなか美人だったし…」
トホ妻 「それがさぁ!(すでに笑っている)オカシかったのよ!“セギディーリヤ”のところってカルメンとドン・ホセの二人だけが舞台で唄う場面でしょ?だからアタシたち合唱団はボーッと練習を聴いてるわけ」
いわんや「ふむ」
トホ妻 「でさ、アレはほら、カルメンがドン・ホセを誘惑する歌だからさ、当然歌詞も男を誘惑するような内容なワケじゃない。」
いわんや「今日は日本語公演だったからけっこう歌詞わかったぜ。♪ゆきましょう〜セヴィリ〜ヤ〜酒場はリリャス・パスティア〜♪…」
トホ妻 「そうそうそう。あの曲の途中でさ、♪連れてってくれる〜おとこが欲しいの〜♪とかっていう歌詞があるのよ」
いわんや「おお、あったあった」
トホ妻 「アソコんトコをなぜか指揮者が何度も練習したわけ。で、『ホニャ番のところからもう一度』って言ってやり直すんだけどさ、たまたまそのホニャ番の練習番号のふってある箇所が♪おとこが欲しいの〜♪ってトコだったみたいなのよ(笑)」
いわんや「ほう…」
トホ妻 「最初の1〜2回は良かったんだけどさ、何度も何度も♪おとこが欲しいの〜♪ってところから始めているうちに、唄ってる本人たちが笑ってんのよね(笑)」
いわんや「…笑う?……」
トホ妻 「カルメンが何度も♪おとこが欲しいの〜♪って唄うじゃない?そのうち相手のドン・ホセがフザケてカルメンに『いや〜御苦労なさってるんですね〜』なんて冗談言ったりして…(笑)」
いわんや「ぷっ…」
トホ妻 「そしたらカルメンの方も『言い慣れないから大変ですわ〜』とか言うしさ(笑)」
いわんや「ひゃっはっはっはっ…!」
ワタクシ、オペラ初体験の方でも心底堪能できるおすすめ作品として「カルメン」以上のものを思い浮かべることが出来ませぬ。クラシックに馴染みのない方でも「カルメン」冒頭、あの序曲が始まればたちまち「おお!これは聴いたことがある!」とお思いになることは間違いございませんで、それ以降も次々と聴いたことのある名旋律が現われる、まさに傑作中の傑作。ワタクシが十数年前に生まれて初めて観るオペラとしてこの「カルメン」にめぐりあったことは、「いわんや芸術観賞史」の中でも最も幸運な出来事の一つだったと今でも思っているのでございます。
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