★韓国ドラマ

 2004年を象徴する一大ブームと申しますと、これはもう間違いなくヨン様・冬ソナ・韓流フィーバーであるのはどなた異論のないところでございましょう。とは言え、実は冬ソナなんて一度も見たことのないワタクシ。ニュースで見るヨン様追っかけオバサマたちの狂態を見ていささか…いや、正直に申せば激しくヘキエキしていたわけでございます。トホ妻も「ヨン様追っかけオバサマ」たちと同じような世代に属するはずでございますが、まぁトホ妻がこういう“ブーム”には氷のように冷めているのは容易に予想がつくというもので…。

対談場所:府中駅前・某居酒屋にて

 ジム帰りのトホ妻と待ち合わせて居酒屋で晩飯。その我々のテーブルの近くに年令40〜50代とおぼしきオバサマたちが10人くらいゴソッと集まってるのを見て…

いわんや「あの辺の年代なんだよなぁ…ヨン様だのホニャ様だの、韓国ドラマに狂ってるオバサマたちってのは。確率的に言ってあのグループの中にも何人かそういうのが混じってんのかなぁ」

トホ妻 「そりゃー混じってんじゃない?今日なんて大変だったんだから。ジムのサウナにテレビがあるじゃない?女湯はだいたい奥様向けバラエティ番組とかやってんだけどね」

いわんや「男湯サウナのテレビじゃスポーツ番組が多いな。競馬とかゴルフとか」

トホ妻 「ところが今日はその女湯サウナのテレビで韓国ドラマが始まってさ。最初は『ヨン様来日騒動のテンマツ』みたいのをやってて呆れて見てたんだけど、その後『冬ソナ』に出たチェ・ジュウっていう女優の出る別のドラマが始まったわけよ」

いわんや「チェ・ジュウ…聞いたような気はするが…」

トホ妻 「アタシはあんまり素敵とは思わないタイプだけど…何かのCMにも出てたはずよ」

いわんや「まぁ顔は知らねぇけど、とにかく女優だろ?ってことはファンは男性なのか?日本のオヤジたちがそのチェ・ジュウ子ちゃんとやらに夢中になってるなんて話、聞いたことねーけどなぁ…。中国のチャン・ツィー子ちゃんの方がカワイイんじゃないか?(チャン・ツィーの顔は知ってる)」

トホ妻 「とにかくそのチェ・ジュウ子ちゃんの主演する『天国のナントカ』っていうドラマが始まったわけよ、サウナのテレビで。そしたらたちまちサウナは満員、逆に水風呂なんてガラガラ」

いわんや「ひょえーー!大昔に『君の名は』とか放送してた頃に『女湯がガラガラになった』ってのと同じじゃねぇかよ!ホントか?そんなに韓流オバサンってのはそこらじゅうにいるのか?」

トホ妻 「しかもさぁー…サウナでちょっと見たそのドラマってのがさぁー…もうスゴいのよ」

いわんや「どうスゴいのさ?韓国ドラマって実は1秒も見たことねぇんだ、オレ」

トホ妻 「とにかくすごい大金持の家があって、そこの娘がチェ・ジュウ子ちゃんなわけ。で、その大金持ちの父親ってのが再婚して、再婚相手が連れ子つきで来る。つまりチェ・ジュウ子ちゃんには新しい母親と新しい異母妹が突然出来たわけ」

いわんや「ふむ」

トホ妻 「その妹ってのがすごくイジワルでさ、ママ母ってのがまたすごくイジワルときた(笑)」

いわんや「なんかソレって…」

トホ妻 「そこに素敵な男性が現れて、そのイジワルな妹が彼に熱をあげるんだけど、ほら、そこはお約束のシンデレラ的な展開で、その男の方はなぜかチェ・ジュウ子ちゃんの方を好きになる」

いわんや「なぁ、ソレってあまりに…」

トホ妻 「ところがチェ・ジュウ子ちゃんはある日突然、交通事故で記憶を失う(笑)」

いわんや「わはははは!そんなバカな!そりゃいくら何でもスゴすぎる!(笑)」

トホ妻 「笑うしかないでしょう(笑)…あらすじを見てアタシも笑ったよ。しかもそのイジワルな妹の描写とかさぁ…古典的というか何というか…靴にガビョウ入れかねない感じ(笑)」

いわんや「まぁその…お笑いとしては楽しめるかも知れんが…(笑)。いや、しかし今その話を聞いてわかったぞ。なぜ40〜50代のオバサンたちが韓国ドラマに夢中になるか。要するに韓国ドラマっていうのは恥ずかし気もないくらいド少女マンガ的な展開が約束された世界なんだな、きっと」

トホ妻 「アナタね、今どきの少女マンガがあんな展開…」

いわんや「いやだからもっと大昔の少女マンガさ。『東京シンデレラ』(注1)みたいな(笑)」

トホ妻 「と、東京シンデレラって…デザイナーを目指す少女とかの話じゃなかったっけ?…あれは確か少女フレンドが創刊された頃のマンガのはずよ。ヘタしたら昭和30年代…」

いわんや「まさに年代的にピッタリやん!韓国ドラマに夢中になってるオバサンたちが子供の頃に読んだのがまさにそういう少女マンガだ。そういうのが脳にプリンティングされた年代なんだよ」

トホ妻 「はー…つまりあの年代のオバサマたちには何やらコジャレた設定でコジャレた会話が延々と続くようなドラマなんかより、昭和30年代少女マンガみたいな古典的な展開の方がうけると…」

いわんや「そうそう。彼女たちにとっちゃ日本の最近のトレンディ・ドラマなんてピンと来なかったんだよ。異常に古典的なストーリーをアラレもなくブツケてくる韓国ドラマこそ『東京シンデレラ』を読んで育った世代にフィットした。おおお、実に説得力ある考察だ!」

トホ妻 「アタシだってその世代のはずだけど、全然フィットしないけどねぇ…しかも韓国ドラマのあらすじって『ジョングとペンスクの間でゆれ動くチョンピ。だが、ペンスクを密かに慕っていたおさな馴染みのヨンボンは…』って感じで、もう誰がチョンピで誰がヨンボンなのか…」

いわんや「はははは!ま、そりゃ海外ドラマなんだから名前はしゃーねーわな(笑)」

トホ妻 「今日もさぁ、みんなチェ・ジュウ子ちゃんのドラマ見にサウナ集まって水風呂ガラガラだったから、アタシなんて水風呂で泳いだよ(笑)」

いわんや「みんながサウナん中で熱く韓国ドラマを見てる時、ひとり冷たい水風呂で泳ぐトホ妻って…何つーか、実に象徴的な光景やのう…(しみじみ)」

 今はとにかく韓流ブームでございますから、韓国ドラマをネタにフザケたことを書くとたくさんの敵を作りかねないのでございますが、ワタクシにとって「韓国ドラマは東京シンデレラ」、トホ妻にとっては「韓国ドラマより水風呂水泳」という結論に達したのは確かなようでございます。なお、この会話に続いて「韓国ドラマはひょっとすると細腕繁盛記か?」といったような会話も交わされたのでございまして、とにかく異常なまでにハッキリとわかりやすい設定というのが韓国ドラマのキーポイントなのではないかと、韓国ドラマを1秒も見たことがないワタクシは思うのでございます。

  

(注1):東京シンデレラというのは…えー…太古の昔に姉キの少女フレンドか何かで読んだだけで詳細は覚えておりませんが、(たぶん)細川千恵子という漫画家の作品で、薄幸のヒロインがイジワルされるけど、人気スター歌手のカッチョイイ男が彼女を見初めてドウたらコウたらっていう、そんな話ではなかったかと…

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