★トリスタンとイゾルデ

 「トリスタンとイゾルデ」とは、ヨーロッパに古くからある伝説をもとに、リヒャルト・ワーグナーというエロジジイ作曲家が作ったオペラでございまして、このエロジジイの手になる歌劇・楽劇の中でも最高傑作の一つに数えられるものでございます。以下の対談は、トホ妻が「トリスタンとイゾルデ」がどんなストーリーなのかをワタクシにレクチャーした時のものでございます。 

対談場所:都内某所喫茶店

トホ妻 「第一幕はイゾルデってお姫さまがマルケ王っていう王様に嫁入りするために船に乗ってるところから始まるの。トリスタンはマルケ王の家来で、その“花嫁送迎”の責任者」

いわんや「つまり上司のヨメさんを部下が運んでるってワケだ」

トホ妻 「そうそうそう。でもね、イゾルデちゃんとトリスタン君は実は以前からの知り合いで、二人は内心惹かれ合うモノを感じていたのよ。しかし何しろ片や上司のお嫁さん、片や亭主の部下なわけでさ、お互い今となってはどうしようもないじゃない?」

いわんや「なるほどね。いかにも悲恋って感じの設定じゃん」

トホ妻 「で、二人は毒を飲んで心中しようとするの」

いわんや「ちょ、ちょっと待て。何で二人は急に心中しようとするんだ?飛躍し過ぎじゃないか?」

トホ妻 「いいのよ。どうせオペラなんてそんなもんなんだから。でもその毒ってのが実は媚薬でさ、二人は媚薬を飲んじゃったもんだからたちまち秘めたる思いのタガがはずれるわけ」

いわんや「う、うーん…まぁいいや、とにかく媚薬飲んだ二人はたちまち恋のトリコとなるわけだ」

トホ妻 「そうそうそう。媚薬飲んでしばらくジッと見つめ合ったトリスタン君とイゾルデちゃんはお互いがお互いの身体を突き抜けんばかりの勢いで抱き合うわけ。そっからあとはもう大変」

いわんや「…お互いの身体を突き抜けるような勢いで…ズボッ!て感じか…」

トホ妻 「で、第二幕はひたすらその二人の逢引きシーン。逢引っていうか…あれはもう男女のナニと言っていいかも…」

いわんや「な、ナニ?トリスタンとイゾルデは舞台上でそんな行為に及ぶのか!?」

トホ妻 「いや、だからさ、実際に舞台上で二人が交尾するわけじゃないわよ。でもまぁ実質的にはそれに近いっていうか、ソレを象徴させているというか…」

いわんや「ふふふ〜ん…(声が震えている)そ、そういうオペラなんだ…」

トホ妻 「ところが第三幕になるといろいろあってさ、トリスタン君は死んじゃうのよ。イゾルデちゃんが駆け付けた時はトリスタン君が死んだあとで、当然イゾルデちゃんは深く嘆き悲しむ」

いわんや「ふむふむ。で、イゾルデちゃんは後追い自殺を遂げる…」

トホ妻 「いや、ちょっと違う。イゾルデちゃんはそこで、意志の力で死ぬの」

いわんや「…何で死ぬって?」

トホ妻 「自分の意志の力で死ぬの」

いわんや「い、意志の力って…じゃ何か?“ぬんっ!”とか気合いモロトモ死ぬってのか?」

トホ妻 「まぁ、ちょっと違うけど、大まかにはそんな感じかな」

いわんや「…???…」

 の対談後数年して、ワタクシ実際に「トリスタンとイゾルデ」の舞台を見る機会がございました。イゾルデちゃんのラストに関しては、まぁ見る人によって様々な解釈がありえましょうが「イゾルデの昇天を暗示して終わる」といったあたりの表現が無難なところではないかと存じます。「イゾルデは意志の力で死んだ」という解釈も決して否定する気はございませんが…ちなみに、第二幕はまさにトホ妻の言う通りトリスタン君とイゾルデちゃんは「音楽的に交尾している」と申して良いのではないかと思うのでございます。

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