★漫画女体論
ワタクシ、先日あるアマチュア合唱団の演奏会パンフレットの表紙イラストを作成致しました。数年前に同じ合唱団のために描いた少女漫画風のイラストを気に入って頂き、「今回もあんな感じで」と頼まれたわけでございます。そこで必死になって「ヒラヒラの薄物をマトッたニンフ」だの「風にそよぐ巻き毛」だの、慣れない絵を描いたわけでございますが、その作業を見ていたトホ妻がまた例によって…
対談場所:いわんや家Mac部屋
トホ妻 「(いわんやの描く少女漫画路線イラストを見ながら)…うーん…」
いわんや「(絵を描きながら)…何だよ…」
トホ妻 「アタシはねー、つくづく思うわけよ…」
いわんや「(絵を描きながら極めて無関心に)…何でも思ってくれよ…」
トホ妻 「どうして男性漫画家の描く女性の身体ってのはいつも同じ特徴を備えてるのかね?」
いわんや「ああ?…ムネがデカいとか、そういうことか?」
トホ妻 「みんな同じなのよ。アナタの描く女性も基本的にはそうよ。とにかくムネ・コシ・シリ・フトモモというあたりの部位を異常なまでに強調してデカく描くんだよね」
いわんや「(描きかけの絵を見ながら)こっ、コレはそんな巨乳じゃないぞ!シリだって別に…」
トホ妻 「いーや。このニンフとか、やっぱりデカめよ。特にコシのあたり…」
いわんや「そ…そうかぁ〜〜?(と言いつつニンフのウェストラインに消しゴムをかける)」
トホ妻 「男性の描く女って、とにかくもう胴回りくらいあるフトモモとか、ボーリングの玉みたいなムネとかさぁ…実際にいたらバケモンみたいのを平気で描くもんね」
いわんや「そりゃそうかも知れんがさぁ、漫画なんだから多少はデフォルメっていう部分も…」
トホ妻 「ありゃデフォルメって域を越えてるよ。アタシが特に感じるのは…あの…何てったっけ?…『浮浪雲(はぐれぐも)』描いてる漫画家…」
いわんや「あはは!ジョージ秋山ね。まぁなぁ…アレは確かに…」
トホ妻 「アレだけじゃないよ。男の描く漫画に出てくる女の身体ってのはとにかく…」
いわんや「そうは言うけどなぁ、少女漫画に出てくる男の身体だって相当ヘンだぜ。頭からマタまでの長さの3倍くらい足が長いなんていうクモみたいな男が平気で出てくるじゃねぇかよ」
トホ妻 「まぁそうなんだけどさぁ、しかしアタシは男性漫画家が描いたムネ・コシ・シリ・フトモモが異常にデカい女を見るたびに一種の感慨を覚えるね。」
いわんや「感慨?」
トホ妻 「つまりさ、ムネとかコシとか、そういう女性的な機能を異常に強調するってのは人間に深く根ざした本能的なモンなんだよ。“ヴィレンドルフのビーナス”がそうじゃん」
いわんや「ヴィ!…いや、さすがにアソコまでは…」
トホ妻 「本質的に同じだって。とにかく何万年も前から男たちは『女の体はアアであって欲しい』と思ってるわけよ、今に至るまで…」
いわんや「お、オレは…アアであって欲しくないと思うなぁ…」
トホ妻 「“ヴィレンドルフのビーナス”から現代の漫画にいたるまで、男が「女の体」に願うものは本質的には変わってないんだよ、きっと。うーん、鋭いね、アタシの問題提起は…」
いわんや「それは無理がないかぁ?現代の男性漫画家が描く異常巨乳女ってのはさ、単に編集者や読者がソレを求めるからというだけで…」
トホ妻 「編集者や読者だって要するに男なワケでしょ?同じじゃん」
いわんや「いやしかし…“ヴィレンドルフのビーナス”は…カンベンして欲しい…」
“ヴィレンドルフのビーナス”と申しますのは、オーストリアで発掘された有名な考古学遺物でございまして、作られたのは数万年前とか。多産と豊穣を象徴する…いや、象徴しすぎたとしか思えない女性像は日本の土偶などにも通じる造形で、興味深いものでございます。今このページを御覧の男性読者の皆様、皆様もああいう女体を心の奥底で求めていらっしゃいますでしょうか?ワタクシは…その、ちょっと…え、遠慮したいのでございますが…。
(→参考資料としてヴィレンドルフのビーナスを見たい方は息を整えてからココをクリックして下さい)
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