★妻のチカラ

 今東西、様々な芸術家たちに対して、その妻や恋人などが及ぼした影響というのは少なくないようでございまして、愛する妻のために作曲した、妻をモデルに絵を描いた、あるいは何らかの作品を妻に捧げた、といった例は実に多うございます。オクサンこそが芸術活動の源だった…のかも知れませんが、ひょっとすると「何か捧げないと怒られるから…」とダンナが思っていたという可能性も…。

対談場所:いわんや家居間

(テレビでたまたまエルガー作曲の「愛の挨拶」が流れてる)

トホ妻 「コレはいい曲だねぇ…イギリスが世界に自慢できる数少ない作曲家だけのことはあるね」

いわんや「この曲ってたしかエルガーがオクサンに“最後ンとこ、もうちょっと直したら?”とか言われたって話があるよな?」

トホ妻 「あるの?そんな話…」

いわんや「たしかこの曲だよ。エルガーが作曲してさ、その楽譜を机に置いて一晩寝て、翌日起きてみたら楽譜の脇にオクサンのメモがあって『とってもイイけど最後のところをもうちょっと…』みたいなことが書いてあったって読んだ記憶があるぜ」

トホ妻 「アタシも名曲アルバムで似たような話は見たかな?エルガーはとにかく愛妻家で、この部屋のこのピアノで『愛の挨拶』を作曲しましたとか何とか…。で、オクサンの写真が飾ってあるんだけどさ、普通の太った中年の女だったね(笑)」

いわんや「ひゃははは!(笑)」

トホ妻 「まぁ、要するにオクサンの力は偉大だってことよ。ふふん」

いわんや「シューマンなんかもけっこうオクサンのクララに触発されて作曲してるもんなぁ…」

トホ妻 「一説にはシューマンよりクララの方が音楽的才能はあったって話もあるくらいだしね」

いわんや「科学の世界でもあるんだよ。昔、火星の衛星を探そうとしたナントカって天文学者がいたんだけどさ、どうしても見つからないから諦めたんだって」

トホ妻 「んで?」

いわんや「ところがそのオクサンが『ねぇアナタ、もう一晩だけやってみたら?』って言うからダメモトでやってみたら何と火星の衛星を発見しちゃうんだよ。彼は天文学史に名を残したわけだ。ソイツの名前、忘れたけど…」

トホ妻 「ほーら。ね?オクサンの言うことは聞いた方がいいっていう教訓だよ、まさに」

いわんや「欧米じゃ音楽に限らず“オクサンに捧げる”って多いもんな。小説の巻頭辞なんて大抵は『我が最愛の妻ホニャララに捧ぐ』とか書いてあるし…『千恵子抄』なんかもまさにソレか…」

トホ妻 「いいよねー…そういう人のオクサンって…いろんなもん捧げてもらってさぁ…」

いわんや「…(不吉な予感が走って話を打ち切る)……」

トホ妻 「…アタシにも何か捧げてよ、ねぇ」

いわんや「えッ?…(不安が的中してたじろぐ)…な、何かって…」

トホ妻 「いーい?みんなオクサンに曲を捧げたり、絵を捧げたり、詩や小説を捧げたりしてんのよ?アナタだってアタシに何か捧げなさいよ」

いわんや「…そ、そんな…こと言ったって…(トッサに反撃の糸口がつかめない)」

トホ妻 「ねー捧げてよー、ねー」

いわんや「こないだオレがパワーポイントで作ったプレゼン用の資料を捧げるとかじゃダメ?」

トホ妻 「…ヤギのエサにでもしな」

いわんや「(突然ヒラメく)…!そうだッ!オレはホームページを捧げてるじゃんか!」

トホ妻 「…(意外な答えにたじろぐ)…そ、そう来たかコイツ…」

いわんや「そうだそうだ!オレはトホ妻帝国というHPをチャンと妻に捧げてる!スゴいッ!!」

トホ妻 「(ウンザリした顔で)ねぇ…あんなモノ捧げられてもちっとも嬉しくないんだけど…」

いわんや「ナニを言う!あんな立派なホームページ捧げられたオクサンがどこにいる?いやー、何て愛妻家なんだろうオレは!はーははははは!」

トホ妻 「・・・・トホホだねまったく・・・・

 事は前向きに捉えなければなりませぬ。エルガーはオクサンのおかげで珠玉の如き名曲「愛の挨拶」を作ることが出来た。仮にエルガーが実生活でオクサンからどんなにヒドい目にあわされていたとしても、彼の名はあの名曲と共に音楽史に残ったのでございます。同様に、いわんやもまたトホ妻と結婚したおかげで鹿のフンの如きバカHP「トホホ妻の帝国」を作ることが出来た。仮にいわんやが実生活でオクサンからどんなにヒドい目にあわされていても…え?そんなの読みゃわかる?…さいざんすね。

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