謎の地下鉄暗黒プール     2002年11月18日 社会面

 児の頃、ワタクシは地下鉄に乗るのがイヤでした。当時板橋区に住んでいたワタクシにとって「チカテツ」と言えば池袋から乗る丸の内線のコトでございましたが、とにかくこの「チカテツ」と称するモノは、それまで乗った様々な「デンシャ」に較べて異様なまでに窓の外は真っ暗で音がガアガアとうるさく、まぁクソガキにしてみればあたかも「地獄に落ちるデンシャ」のように思えたわけでございまして、池袋駅で両親が丸の内線にワタクシを乗せようとすると、恐怖におびえたワタクシは泣いて抵抗したものでございました。

 下鉄におびえて泣きわめくクソガキの処置に困った父親は「窓の外にある鉄の棒を見ていればコワくない」などと適当なコトを言ってワタクシを地下鉄に乗せ、クソガキいわんやを窓に向けて座らせたものでございます。地下鉄で窓の外を見ても見えるのはトンネルの壁面だけでございますが、丸の内線に乗って進行方向左側(つまり、反対側の線路に面したガワではなくトンネルの壁面に接したガワ)の窓を見ると、まるで手すりのように鉄棒がずーーっとトンネル壁面に取り付けられておりまして、ワタクシはとりあえずそれをジッと見つめてチカテツの恐怖に耐えていたわけでございます。

 かし地下鉄のトンネルといえども終始壁面ばかりというわけではございませんで、駅はもちろん引き込み線や資・機材置場?等々、様々な地下構造物が存在致します。窓を外を見るワタクシの目には、すごいスピードで右から左に流れて行くトンネル壁面と鉄棒がたまにスッと途絶え、そこに何やら神秘に満ちた地下構造物が広がっていたわけでございます。

 して…ある日コドモは見てしまいました。禁断の「地下鉄暗黒プール」を!目の前のトンネル壁面が途絶えてスッと風景が広がったその先に存在した円形の暗黒プール…いやもう何とも言えぬ光景でございました。コドモ心にも「自分はなにか見てはいけないモノを見てしまった」と思ったものでございます。

いわんやに生涯消えないイメージを焼き付けた地下鉄暗黒プール

 が下手なために、何となく小さめのプールに見えますが、実際にはプールに対して人物はもっと小さく、かなり大型の円形プールだったはずでございます。コワい光景でございましょう?特に無気味なのは真ん中の監視台?のような場所にいる白衣のヒトたちでございまして、この光景を見たワタクシは反射的に「これは!きっとキチガイ病院(当時のガキはこの程度の差別用語は平気で口にしたのでございます)の患者を泳がせるための、見られてはならぬ秘密のプールで、だからこんな暗い地下鉄のワキなんかに作ってあるんだ!」と考えたわけでございます。

 ぁイマフウに申せば「精神病患者のための“水泳療法施設”」とでも言ったところでございましょうか。今であればもちろん地下鉄のワキなどにこんなモノを作ることはないでしょうが、何せ昭和30年代の話。当時は精神病に対する社会的理解も浅く、このように秘密の水泳療法施設を地下に作り、暗闇の中で照明に照らされながら人知れず水泳療法に励んだというわけで…あ、アナタはいま疑ってますね?ワタクシが見たものをマボロシだと思ってますね?ホントに見たんですってばッ!!

 のHPをもし営団地下鉄の職員の方が御覧になっていたら、きっと「こ、コイツは職員の中でも一部しか知らないはずの、あの極秘プールを見たのか?!」とお思いになっておられるはず。一般には決して知られてはならぬため、本来閉じているべきシャッターか何かが、きっとあの時だけ偶然開いていたたのでございましょう。そして、地下鉄であるにもかかわらず窓の外を注視していたクソガキが偶然ソレを見てしまったのです。その証拠に、その後ワタクシが丸の内線に乗ってどんなに目を凝らしてトンネルの中を捜しても…この暗黒プールは2度と発見できなかったのでございまして、で、でもだからといってそれがマボロシであるとは…見たんですってばぁ〜!!

担当:社会部いわんや記者

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