のせたけ様よりの投稿2 

 回「驚異の母」ネタを投稿して頂いたのせたけ様が、今回は御結婚間近の御婚約者様とのエピソードをお送り下さいました。どんなカップルも無事結婚するまでは様々な困難に直面するものなのでございましょうが、時にはこんなこともあるのでございますねぇ…。例によって改行部を若干変更した程度でほとんど頂いたまま掲載しております。

結婚をひかえた僕とトホ彼女。着々と結婚に向けての準備を整えていく毎日。
ある日僕達は、結婚のマストアイテムとも言うべきものを買いに出かけました。
「ウェディングドレス」
純白に輝き、神々しいまでの潔癖さを誇らしげに掲げる、そんな特別な装束。
しかし、僕達がトホホのアルゴリズムから、逃れられるはずがないのでした…。

知り合いのまた知り合いが紹介してくれた、移転間近のウェディングドレス専門店。
閉店直前在庫処分出血大安売り中!オリジナルデザインのドレスがなんと三万円!
トホ彼女はお店に到着する前から鼻息も荒く、競馬用語で言うところの「入れこみすぎ」状態。

お店に到着。「お店」といっても住居兼店舗。とてもアットホームな雰囲気。明るい展示室。
「お好きなドレスをご試着下さい」店長夫人のありがたいお言葉。
ここにきてトホ彼女フルブースト。飢えた獣の檻に生肉を放り込んだ状態。

手当たり次第にドレスをつかんでは着る、つかんでは着る。
一着着るたびにポーズをとり、はい、記念撮影。
ごそごそ。パシャ。むんず。ごそごそ。……。
このループが果てしなく続くと思われ、気が遠くなる。
「あ。これかわいい。これにする」
「うん、じゃあ店の人呼ぼうか」
「ちょっとまって」
ごそごそ。パシャ。むんず。ごそごそ。……。
獣は生肉の山を前に、恍惚の表情を浮かべていた。

永久機関の理論が、僕の目の前で立証されようとしたその時。
「た、たけし(僕の名)さ〜ん」
と、試着室の中から、情けないトホ彼女の声。
「入っていいの?」「うん。助けて〜」
「助けて」とはただ事ではない。何が起こったかと、試着室のカーテンを開ける。

彼女は、ドレスの一部をジッパーに「噛ませて」しまっていた…。

脇の下にあたる部分についていた、細いリボンみたいなパーツ。
後に「テープ」と呼ばれていることが判明したが、
彼女は、生肉を貪り食うのに執心するあまり、トランス状態に入ってしまい、
「次の!次の肉!」となった挙句、テープをジッパーに引っ掛けてしまったのです。

「取って〜」と言われても、これがまた、完璧なまでの噛み具合。
間の悪いことに、購入するドレスは決定済み。いわば「欲の皮」の部分で試着していたドレスで、まさかこのような事が起こるとは…。
「弁償」その言葉がギャートルズのように形を成し、脳髄を刺激する。
予算はきっちり三万円。余分な出費ができる訳ではない。
体から血の気が引く音を聞いたことがありますか?
僕はこの時、生まれて初めてその音を聞いてしまいました。

「あ。これ。切れば大丈夫ですよ。お金?いいですよ。たかがテープですし」
店長夫人が福音にも似た言葉をかけてくれたその時、
僕達二人が半ベソ状態で、「ありがとうございます。すみません。」
と言ったことは、容易にご想像頂けるかと…。

 ホ妻帝国ともリンクしているのせたけ様の自作ホームページの中には、上の投稿に登場している御婚約者様がお作りになったページというのが1箇所ございます。しかもそのページがもう実に可愛らしく、チャーミングな機知に富んだ御婚約者様のお人柄が伝わってくるようなのでございます。

 のように可愛らしい御婚約者様も、ドレス選びともなれば「飢えた獣」になるのは避けがたいというのは恐ろしいことでございます。しかし、これはもはや女性の本能。我がトホ妻とて例外ではございません。彼女が服やら靴やらの買い物をしたいなどと言うと、ワタクシは「じゃ、オレはその間パチンコでもしてるから、あとで待ち合わせしよう」と提案し、何とか「獣のオリ」から逃がれようとするのでございますが、残念ながら聞き入れられたタメシはほとんどございません。

 うも女性にとっては、いろんなものを試着して自分が「どう?」などと聞いた時に「似合う」とか「いい」とか言ってくれる人間が“店員以外に最低もう一人”いないと承知しないようでございまして、ワタクシも結局は「獣のオリ」の中に引きずり込まれ、「その色は似合わないな」「さっきの方がいいよ」などと言わねばなりません。ワタクシ婦人服のことなんて全く分からないのに、モットモらしい言葉をトッサに次々と思い付かねばならず、これがけっこう大変なのでございます。

 パートの婦人服売り場などでそうやってトホ妻が試着室にコモッている間、手持ちぶさたのワタクシがボーッと周りを見回していると、「妻ないし彼女」の荷物を持たされてやはり試着室のワキで手持ちぶさたにボーッとしている男というのが必ず3人や4人はいるものでございまして、もうこれは男子に課せられたサダメと思って受容するしかないことなのでございましょう…。

 せたけ様は御結婚前に「試着室での危機管理」の必要性を痛感するという貴重な経験を積まれたわけでございますから、ついでに「獣のオリ」からの巧妙な脱出法も考案して頂き、世の男たちに広めてもらいたいと思うワタクシでございます。のせたけ様、この度は投稿ありがとうございました。御婚約者様にもこの場を借りて御礼申し上げます。

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