東京都立大学開学50周年記念式典

 本日は、お忙しい中、東京都立大学の開学50周年記念式典のために、多数の御来賓の方々に御臨席を賜りまして、誠に有り難うございます。式典を挙行するにあたり、一言御挨拶を申し述べさせて頂きます。
 東京都立大学は1949年に創立され今年開学50周年を迎えました。本日ここに記念式典を挙行できることは本学の関係者一同にとって大きな喜びであり、御列席の皆様並びに関係各位に心より感謝の意を表したいと思います。
 初めに、開学から現在までの本学の歩みを簡単に御紹介申し上げたいと思います。東京都立大学は戦後間もない1949年に「首都東京の大学」として誕生致しました。本学の設置目的は東京都立大学条例に「東京における学術研究の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学術を研究し、あわせて都民の生活及び文化の向上発展に寄与する」と述べられ、本学が首都東京の学問と文化の中心であることが謳われております。本学は旧制の6つの学校、即ち、都立高等学校・都立工業専門学校・都立理工専門学校・都立機械工業専門学校・都立化学工業専門学校及び都立女子専門学校を母体として、人文学部・理学部・工学部の3学部でスタートし、その後1957年に人文学部から法経学部を分離し、更に1966年には法経学部を法学部と経済学部に分割して5学部になりました。開学当初400名だった入学定員はその後何回か定員増を行い、8年前にこのキャンパスに移転したときから1000名になりました。キャンパスの移転により研究・教育環境が格段に向上したことが本学の発展に大きく貢献していることは申すまでもありません。一方、大学院は1953年に人文科学・社会科学・理学・工学の4つの研究科15専攻でスタートし、専攻の増設等を重ね1994年には我が国で初めての都市科学の教育・研究を目的とする独立研究科として都市科学研究科を設置し5研究科26専攻となりました。開学以来大学院教育に力を注いで参りましたが、1997年には高度な専門教育に対する意欲の高まりに応えて定員増を行い、特に、理学研究科と工学研究科では定員を2倍以上に増やし、更に本年度は理学研究科に身体運動科学専攻を新設して5研究科27専攻、入学定員369名となりました。併せて、都市に関する総合的な研究を目的とする全学組織として都市研究所を設置しております。又、本学は開学以来昼夜開講制を実施して「勤労者に開かれた大学」を特色として参りました。更に近年は都民カレッジ等の活動を通じて「都民に開かれた大学」として積極的に都民の文化の向上発展に寄与しております。本学は小規模ながら5つの学部と5つの研究科及び1つの研究所を持つ総合大学であり、少人数によるきめ細かい教育と優れた研究者による高度な研究を特色としつつ、都民と共にこの50年の歴史を築き上げて参りました。
 「1949年生まれの大学」は、数百年の伝統をもつ欧米の大学は勿論、明治期からの歴史をもつ日本の幾つかの大学と比べても非常に新しく、まだ青年期にある若い大学ということができます。幸いなことに、本学は東京という地で、「少人数教育」による「自由な学風」の「開かれた大学」としてスタートすることができましたので、開学当初から優秀な人材が集まり、小規模な大学であるにも拘わらず国際的に高く評価される研究成果をあげてきました。つい先日も本学の2名の教授が日本動物学会賞を受賞するという快挙があったばかりです。又、本学は研究の面ばかりではなく教育の面においても有為な人材を多数輩出して参りました。この50年間に本学を巣立った31249名の学士、6875名の修士及び本学で学位を取得した1550名の博士達が社会の各分野の第一線において活躍しております。
 本学のこの50年間の足跡を振り返るとき、終戦後の財政窮乏のなかで大学を設置した東京都の高等教育に対する深い理解と積極的な意欲、並びに、研究・教育に輝かしい実績を築き上げてきた諸先輩方の高い見識に対して、改めて深く敬意を表したいと思います。私共はこの素晴らしい成果と伝統を次代に引き継ぎ、更に飛躍させなければならないと肝に銘じております。
 この50年間に日本は大きく変化し、大学も変わりましたが、都立大学は一貫してアカデミックで自由な学風を守り続けてきました。本学が小規模であるにも拘わらず、国際的にみてもハイレベルな研究成果をあげて来られたのは、この「自由闊達な精神」が大学に満ちているためであろうと思います。然し、社会の急激な変化と少子化等により、大学が「良き伝統」だけを守って生きていける時代ではなくなりました。本学が国際都市東京の学術・文化の中心として更なる発展を目指し、新しい時代の魁となるために、この50年間の実績を踏まえ、全学の英知を集めて改革に着手しております。具体的には、社会のリーダーたるに相応しい豊かな人間性を陶冶するために教養教育を再構築し、高度な専門教育の前提として基礎専門教育を充実させ、更に社会の複雑化と学問の高度化に対応して各分野の第一線で活躍できる人材を養成するために大学院機能の充実と多様化をはかり、社会への貢献の一環として地域との連携や産学公の連携を推進し、都立の総合大学であることの特色として都市・地方自治研究体制を構築する等の改革を進めようと考えております。今世紀も余すところ425日となりました。東京都立大学はこの改革を成功させることによって、この困難な時代を乗り越え、英知と希望に輝く翼を大きく広げて21世紀の空に羽ばたいていきたいと願っております。
 最後に、本日御臨席を賜りました御来賓の方々を初め御列席の皆様に重ねて感謝申し上げますとともに、本学に対し引き続き温かい御理解と御支援を賜りますようお願い申し上げまして、私の挨拶と致します。有り難うございました。
[1999年11月2日 都立大学講堂大ホール]