日本人類学会大会挨拶

 日本人類学会の皆様、ようこそ東京都立大学においで下さいました。本学を代表して歓迎の挨拶をさせて頂きます。
 日本人類学会は1884年に創立されて115年の伝統を持つ、日本最古の学会であると伺いました。このような伝統ある学会が開催されることは本学にとって大変に名誉なことでございます。
 本学はかつては目黒区と世田谷区にキャンパスがありましたが、8年前に現在のキャンパスに移転致しました。東京の西のはずれで交通の不便を感じた方もいらっしゃるかも知れませんが、紅葉を楽しみ落ち葉を踏みしめながら有意義な大会を開催して頂ければ幸いと存じます。但し、裏の林の中には冬眠に入る前のマムシがとぐろを巻いているかも知れませんので御注意下さい。
 「人類学」といえば、類人猿からネアンデルタール人、クロマニョン人、・・・という教科書にあった絵が頭に浮かびますが、大槻先生に伺ったところ、人類学は「発達した文化を持つ生物種としての人類」を総合的に研究する科学であり、解剖・生理・発育・運動機能・遺伝・行動・生態等々実に様々な分野があって漠然と想像していたよりもはるかに広いことを知り、改めて人類学に畏敬の念を抱いております。私は娘が会長の木村先生に御指導頂いて人類学を専攻していることもありまして皆様の学会を身近に感じておりますが、昨今は社会一般の人類学に対する関心が非常に高まっているのではないかと思います。最近よく「日本人のルーツ」という言葉を耳にします。体型や顔の特徴から、日本人は「縄文人」と「弥生人」の2つの系統に分かれると聞きましたが、私はどちらの系統に属するのでしょうか。又、最近の若者は人種が違うのではないかと思える程体型や顔つきが違ってきているように感じられます。ほんの20年位前までは日本人は「胴長・短足で顔は扁平、目ははれぼったくて出っ歯、眼鏡をかけてカメラを持っている」というのが国際的な共通概念だったと思いますが、最近の若者達は胴長・短足の親から生まれたとは思えない程足が長くなりました。「スネかじる息子のスネの長さかな」という川柳がありますが、まったく日本人離れしているという程に長くなりました。この現象を人類学ではどのように説明するのでしょうか。興味あるところです。
 ともあれこの度伝統ある日本人類学会の会場として本学が選ばれたことは大変に名誉なことでございます。日本人類学会が今後とも「長足の進歩」を遂げられますようお祈りして私の挨拶と致します。本日は有り難うございました。
[1999年11月6日 日本人類学会懇親会]