日本民族学会研究大会挨拶
日本民族学会の皆様、ようこそ東京都立大学においで下さいました。私は山住正己先生の後任としてこの4月から東京都立大学の総長を勤めている荻上でございます。本学を代表して歓迎の挨拶をさせて頂きます。
本学はかつては目黒区八雲と世田谷区深沢にキャンパスがありましたが、キャンパスが2箇所に分かれていることの不便さに加えて、余りにも狭隘で学問の発展に対応できなくなり、1991年に現在のキャンパスに移転致しました。当時はバブル経済の末期で、東京都は都庁と都立大学を同時に移転させましたが、今から振り返ると夢のような気が致します。現在のキャンパスは八王子市の外れにありまして、交通の不便を感じられた先生方もいらっしゃるかと思いますが、緑溢れる環境で有意義な研究大会を開催して頂ければ幸いと存じます。
皆様の日本民族学会は、今回が33回目の研究大会と伺いました。「民族学」というのは大学では余り耳にしない学問だと思って大会委員長の渡辺欣雄先生にお聞きしましたところ、内容は「文化人類学」や「社会人類学」として開講されている学問分野であり、しかも「日本人類学会」とは戦前より連合大会を開く等して、理系の人類学と極めて親しい間柄であることを伺いました。私は娘が自然人類学を専攻していることもありまして皆様の学会に親しみを感じております。
日本民族学会は1934年に創立されて65年の伝統を持ち、会員数が2000名という大きな学会であることを知りました。このような伝統ある学会が開催されることは本学にとって大変に名誉なことであると思います。
皆様御承知のことと存じますが、本学には大学院社会科学研究科に「社会人類学」専攻が設置されております。都立大学の社会人類学専攻は1953年に本学の大学院開設と同時に設置された日本で最初の社会人類学専攻とお聞き致しました。修了者の約70名が大学や研究所の専任として活躍していらっしゃるとお聞きし、又、松園教授が会長を勤め、渡辺教授が大会委員長を勤めていることからも、改めてこの分野における都立大学の貢献の大きさを認識し誇らしく思っているところであります。 都立大学は今年で開学50周年を迎えます。「1949年生まれの大学」は、数百年の伝統をもつ欧米の大学は勿論、明治期からの歴史をもつ日本の幾つかの大学と比べても非常に新しく、まだ青年期にある若い大学ということができます。その若い本学が社会人類学の分野に多くの人材を送り出していることは本学の責任者として喜ばしい限りでございます。
今日・明日は事務職員が出勤しておりませんので何かと御不便をおかけするかも知れませんが、本学の施設を十分御活用頂き第33回研究大会が実り多いことをお祈りして私の挨拶と致します。本日は有り難うございました。
[1999年5月29日 京王プラザホテル多摩]