日本西洋史学会第51回大会挨拶

 東京都立大学を代表して日本西洋史学会の先生方を心から歓迎致します。日本西洋史学会の今世紀最初の大会である第51回大会を本学で開催して頂いたことを誠に光栄に思います。また、このように盛大な懇親会が催されることを、大変羨ましく思います。ただ、こうして会場を拝見致しますと、意外に女性が少ないようにお見受け致します。
 只今中野教授から「キャンパスの散策をお楽しみ下さい」という話がありました。是非お楽しみ頂きたいと思いますが、一つだけ御注意を申し上げておきます。中野教授の話の中に「かつてこの地域には色々なものがいたけれども最近はいなくなってしまった」とありましたが、実はキャンパスの林には今でもマムシがいますので呉々も御注意下さい。
 都立大学は日本西洋史学会より1才年上で今年52才になります。50才の節目を迎えて以来、国際的な評価を維持発展させつつ21世紀に相応しい大学を目指した改革を実現すべく検討を進めておりましたが、その矢先に石原知事の「売り飛ばすぞ」などという発言もあって、何かと注目されることが多くなっております。現在全学の総力を結集して改革に取り組んでおりますが、結果は歴史によって評価されることになります。歴史の教科書は書き換えることができても、歴史そのものは書き換えることができませんので、大変な緊張感をもって改革に臨んでおります。西洋史学会の先生方におかれましても、是非宜しく御支援を賜わりますようお願い申し上げます。
 1989年以降、ベルリンの壁崩壊、ソ連邦の解体、EUの誕生等々西洋の歴史は激動を続けており、西洋史の教科書の該当するページは様々な記述で真っ黒に書き潰されているのではないかと思います。物の本を見ましたら「歴史の幸福なページは空白である」と書かれていましたが、幸福な日々ばかりが続いていれば歴史学の研究者は失業することになってしまうでしょうから、先生方にとっては激動も必要ではないかと思われます。
 「歴史を学ぶ」ことは「歴史に学ぶ」ことであるといわれていますが、まことに歴史は我々に様々なことを教えてくれます。特に、先進的な文明を築いてきた西洋の歴史は人類の宝であると言うことができるでしょう。「歴史の研究は過去の光を未来に投げかけること」だと聞いております。先生方の手で西洋の歴史の光を投げかけ、人類の未来を照らして下さることを期待すると共に、日本西洋史学会の益々の御発展をお祈り申し上げます。本日は有り難うございました。
[2001年5月12日 京王プラザホテル多摩]