東京都立大学公開講座
─インターネットの時代を生きる─

 本日は大勢の皆様に御来場頂きまして誠に有り難うございます。
 皆様御承知のように、インターネットは社会生活や経済活動の基盤となってきており、私達の日常生活にまで進出しつつあります。今日ここにお集まりの皆様の中にも、職場でパソコンを使っている、あるいは家にパソコンがあるという方が相当数いらっしゃることと思います。御本人がパソコンを使わなくても、息子さんや娘さんがインターネットに夢中だという方も多いことと思います。私自身もインターネットを使わない日はありません。
 振り返ってみれば、20世紀はトランジスターの発明に端を発してエレクトロニクスが飛躍的に進歩した時代でした。私が子供の頃にはテレビはなく、電話さえ珍しい時代でしたが、今では携帯電話でいつでもどこでも瞬時に通話が可能になり、更に携帯電話からインターネットで世界につながるという夢のようなことが現実となりました。インターネットは今後の社会においてその重要性が益々増大することは間違いなく、21世紀がインターネットの時代になることは、既に疑いようがないといってもいいでしょう。
 しかし、余りにも急速な電子情報化によって様々な問題が発生していることは御承知の通りです。インターネットを使って行われる違法な売買、或いは他人のカードの情報を盗んで不正使用するカード詐欺、また連日のように新聞紙上を騒がせるハッカー等という従来の犯罪の概念とは異質で遙かに重大な危険を孕んだ「倫理無き技術者」達との鼬ごっこは単なる技術の問題としては解決することができません。科学技術の進歩に見合う社会倫理や法律の整備、行政の対応等が必要です。
 本日は、インターネットを活用してより豊かな21世紀を築くために何をしなければならないかについて、本学の情報工学、社会心理学、法律学のスタッフから多角的に検証してもらい、これから迎えるインターネット時代の光と影について、皆様と共に考えてみたいと思います。どうぞ最後までおつきあい下さい。
[2000年6月9日 都庁都民ホール]