日本言語学会第118回大会挨拶

 日本言語学会の皆様、ようこそ東京都立大学においで下さいました。本学を代表して歓迎の挨拶をさせて頂きます。
 日本言語学会の第118回大会を本学で開催して頂き誠に有り難うございます。日本言語学会は60年を越える歴史があるとお聞きしていますが、そのような伝統ある学会が本学を会場として選んで下さったことは誠に光栄でございます。この学会が本学で開催されるのは1959年、1979年に続いて3回目と伺っておりますが、丁度20年間隔ですので、次回は是非2019年に開催されるようお待ち申し上げております。その時には私は既に退職していますが、しっかりと申し送りをしておきますので御安心下さい。
 都立大学は今年で開学50周年を迎えます。「1949年生まれの大学」は、数百年の伝統をもつ欧米の大学は勿論、明治期からの歴史をもつ日本の幾つかの大学と比べても非常に新しく、まだ青年期にある若い大学ということができます。その若い本学で3回も日本言語学会を開催して頂けたことは本学の責任者として喜ばしい限りでございます。
 私の専門は数学ですが、言語学は数学や生物学或いは工学などとも密接な関わりがあると思います。最近はコンピューター言語等も重要な地位を占めるようになり、言語学の重要性が高まっていることを実感しています。一方、世の中には言語明瞭意味不明な人や言語道断な人等もいてしばしば悩まされます。これらも言語学の研究対象にして頂ければ有り難いと思います。もっとも、「言語道断」というのは仏教用語で「奥深い真理は言葉で説明することができない」という意味だそうですから言語学の対象にはなり得ないのかも知れませんが・・・。これからも学際的な協力を積極的に進めて頂き、人間文化の基幹をなす言語の研究が益々発展することをお祈り申し上げます。
 皆様御承知のことと存じますが、本学の人文学部には文学科があります。その中に国文学、中国文学、英文学、独文学、仏文学の専攻があり、それぞれに言語学を研究している教員がいます。また日本語教育に携わる教員もいて、これもまた言語学の関連分野と考えられます。本学のこの分野が益々発展し日本言語学会により大きな貢献ができるようになることを期待している者として皆様方の一層の御支援をお願い申し上げます。
 本学はかつては目黒区八雲と世田谷区深沢にキャンパスがありましたが、キャンパスが2箇所に分かれていることの不便さに加えて、言語に絶する狭隘さで学問の発展に対応できなくなり、1991年に現在のキャンパスに移転致しました。当時はバブル経済の末期で、東京都は巨費を投じて都庁と都立大学を同時に移転させましたが、今から振り返ると夢のような気が致します。現在のキャンパスは八王子市の外れにありまして、交通の不便を感じられた先生方もいらっしゃるかと思いますが、緑溢れる環境で有意義な大会を開催して頂ければ幸いと存じます。
 本学は少人数教育を特色にしており、大学院教育には特に力を入れております。大学院に他大学からの志願者が多いという実績は本学の研究・教育体制が評価されていることの現れと自負しておりますが、折角の機会ですのでこの席をお借りして、宣伝をさせて頂きたいと思います。先生方の所で大学院へ進学を希望している学生がいましたら是非都立大学の大学院をお薦め下さるようお願い申し上げます。
 今日・明日は事務職員が出勤しておりませんので何かと御不便をおかけするかも知れませんが、本学の施設を十分御活用頂き第118回大会が実り多いことをお祈りして私の挨拶と致します。本日は有り難うございました。
[1999年6月19日 都立大学講堂大ホール]