新年挨拶2001
新年並びに新世紀明けましておめでとうございます。
いよいよ21世紀が始まりました。新しい世紀といっても所詮人間が勝手に決めた暦の上でのことであって科学的には何の変わりもない日々が続くだけだと考える人もいるかも知れません。しかし、20世紀終盤からIT化が爆発的に進行する中にあって、政治、経済、学問など様々な分野で急速な変化が起きています。新世紀の到来と共に何か新しいことが始まるのではないかという期待や不安をもっている人も多いのではないでしょうか。例えば、明後日から実施される省庁再編では、律令時代から続いてきた「大蔵省」という名称が消えることになります。また「文部省」という名称も「文部科学省」ということになり、これもひとつの新しい時代の象徴といえるかも知れません。
本学では、御存知のように全学をあげて取り組んできた大学改革がいよいよ大きな山を迎えることになります。都立大学の改革は本学が単独で進められるのではなく、都立の4大学の改革の中に位置付けられており、今後の日程としては、2月に「改革の基本方針」が決められ、夏までには「改革大綱」が策定される予定になっています。
再三申し上げていることですが、現在我々が取り組んでいる大学改革は、行政改革のために行うのではなく、あくまでも21世紀の大学の在るべき姿を求めて行っているのだということを改めて肝に銘じて進めていきたいと思います。改革の結果、国際的な評価が低下したり、受験生に人気が無くなったり、社会からの評価が低下したりするようなことがあっては断じてなりません。そのために、守るべきは守り、改めるべきは改めていかなければならないと思います。学内においても考えが異なったり利害が対立したりすることがあるとは思いますが、都立大学百年の計のために小異を捨てて大同に付き、全学一丸となって前進して頂きたいと思います。呉々も「大同を捨てて小異をつつく」ことのないよう、何卒宜しくお願い致します。
ところで、今年は巳年です。「巳」即ち「蛇」は十二支の6番目です。世の中には蛇をペットにして可愛がっている人もいるようですし、この中には「ウワバミ」も何人かいらっしゃるようですが、一般には「気持ちが悪い」「毒がある」「執念深い」「ずる賢い」などというイメージが強く、余り好かれない動物のようです。私自身は巳年ですが蛇は大嫌いです。然し、何か良いことはないかと「物の本」を繙いて調べてみたところ、意外にも蛇はなかなか人気があって非常に高い地位を与えられていることが分かりました。例えば、ギリシャ神話では、蛇は不老不死と再生の超能力をもつものとされ、医学の神アスクレピオスの杖に巻き付いています。叡智の神とも考えられ、錬金術にも守護神として関わりを持っているようです。エジプトではファラオの王権の象徴は蛇でした。日本でも弁才天や水神の使いとみなされており、富や芸などをもたらしてくれる縁起のよい動物とされています。俗に蛇皮の財布はお金が貯まるなどといわれています。そうしたことを考えますと、「不老不死と再生の超能力」をもち「叡智の神」とされ、脱皮しながら成長する蛇は、現在の都立大学に誠に似つかわしく、相通じるものがあるといえるのではないでしょうか。
新しい世紀を迎えて都立大学が脱皮して大きく成長するために蛇年に相応しい叡智を結集していかなければならないと思います。厳しい状況下ではありますが、蛇のようにしなやかに、執念深く改革に取り組んでいきましょう。
最後に、蛇足ではありますが、辰年から巳年に替わって大学改革が龍頭蛇尾に終わったりすることのないよう、全ての教職員がそれぞれの持ち場で力の限りを尽くし、新たな気持で21世紀のスタートを切りましょう。
今年も宜しくお願い致します。
[2001年1月4日 都立大学大会議室]