新年挨拶2002

 明けましておめでとうございます。
 早いものでまた一年が経ち、新しい年を迎えました。昨年は本学にとっても厳しい嵐が吹き荒れましたが、国際的にも色々な出来事がありました。残念ながら明るいニュースは多くなかったと思います。
 本学では、御存知のように全学をあげて大学改革の検討に取り組んできましたが、昨年の11月16日に「東京都大学改革大綱」が発表され、いよいよ実施設計の段階に入りました。「大綱」に盛り込まれている都立の4大学の統合再編、学部夜間課程の廃止、法人化などは本学の歴史を大きく変えることになります。
 文部科学省も「国立大学の再編・統合」「国立大学の法人化」「トップ30大学の育成」など大学の構造改革に精力的に取り組んでいます。この中で、国公私「トップ30」を世界最高水準の大学に育てる構想は本学の目指す方向に合致するものであり、是非とも多くの分野が「トップ30」の仲間入りを果たすことによって、本学の研究・教育機関としての実力をアピールしたいと思い、そのための作戦を練ってもらっているところです。
 私は就任当初から、文系の教育・研究体制の整備、先端科学分野の充実、教養教育の再構築などを是非実現したいと考えてきました。検討の過程においては、随分乱暴な議論も展開され、一時は文系にとって危機的な場面もありましたが、「大綱」では5学部・5研究科体制が5学部・7研究科体制に再編されることになりました。しかしながら、「理工系のキャンパス配置」は一旦決めれば50年先まで変更することが困難であるだけに、新大学の、特に理工系の将来にとって決定的な意味を持つ大きな問題です。
 再三申し上げていることですが、現在我々が取り組んでいる大学改革は、行政改革のために行うのではなく、あくまでも21世紀の大学の在るべき姿を求めて行っているのだということを改めて肝に銘じて実施設計に当たらなければならないと思います。これからは学内においても利害が対立することがあると思いますが、都立大学百年の計のために小異を捨てて大同に付き、「総論賛成、各論反対」とならないよう、何卒宜しくお願い致します。改革の結果を評価するのは、設置者でも我々自身でもありません。第三者により歴史によって厳しく評価されることになります。国際的な評価が低下したり、受験生に人気が無くなったり、社会からの評価が低下したりするようなことがあっては断じてなりません。
 ところで、今年は午年です。「午」即ち「馬」は十二支の7番目であり、我々にとって親しみやすい動物です。私は信州の出身ですが、長野県や熊本県では馬は人間にとって殊更身近な存在です。馬にとっては迷惑なことでしょうが、我々は子供の時から馬肉を日常的に食べて育ちました。「今日はすき焼きにしよう」といえば当然「馬すき」即ち「桜鍋」でした。「馬刺」と「馬すき」は今でも私の大好物ですが、東京では馬肉の影が薄いのが残念です。然し、昨今は牛肉が危険になりましたので、「牛を馬に乗り換え」馬肉を食べ馬力を付けて大学改革に立ち向かおうではありませんか。間違っても大学改革が「馬を牛に乗り換える」ような結果にならないように心掛けなければならないと思います。21世紀最初の午年の今年、都立大学が「天馬空を行くが如く」飛躍発展、躍動の年であることを期待します。手綱を引き締め、身も心も引き締めて頑張りましょう。
 今年も宜しくお願い致します。
[2002年1月4日 都立大学大会議室]