公立はこだて未来大学開学記念式典

 公立大学協会の荻上でございます。公立はこだて未来大学の開学を心よりお喜び申し上げ、公立大学を代表して一言お祝いの言葉を述べさせて頂きます。
 御存知のように現在は大学受難の時代であります。従来、大学は「学問の府」として存在を自明の理としてきましたが、昨今はその「あるべき姿」が厳しく問われ、「設置目的」や「特色」が明確でなければ存在を許されない時代になりました。このような時代のうねりの中、国立大学の法人化や統合等の動きが進みつつある一方で、地域の期待と時代の要請を受けて特色ある公立大学が次々と誕生し、本年開学した6校を加えて、72校になりました。地方分権の時代に誠に相応しく、公立大学協会と致しましても、新しい仲間が増えて、心強い限りでございます。
 古来「名は体を表わす」といわれていますが、本学の名前は「未来に向けて新しく知識を創る大学」という意味を表わしているのだと思います。御存知のように、21世紀は「生命科学」と「情報科学」が中心的な役割を演じる時代になることは確実ですが、本学のホームページを拝見しましたら、複雑系科学科の学生が複雑な現象を解析し、その結果を情報アーキテクチャ学科の学生が効果的な方法で伝達するという、二人三脚の教育・研究体制が組まれていることが分かりました。まさしく「未来」という名前に相応しい、これまでにない画期的な21世紀の大学が誕生したという感慨を抱き、これまでとは一味違う新しい大学が、未来を担う人材を育てていくという歴史の息吹を感じました。
 生命現象、自然現象、社会現象のような我々の身の回りの現象は余りにも複雑で、今まで必ずしも科学的な取り扱いがなされてきたとはいえませんでしたが、このような複雑系の科学を対象として研究・教育を推進する大学が誕生したことは誠に素晴らしいことであると思います。一方、情報科学は、いままでどちらかといえば機械を中心に発展してきたと思いますが、本学では人間を中心とした視点から情報のシステムや環境を作るための教育・研究が行われるということですから、人間が主役になる情報時代をリードして下さることと思います。
 函館という歴史ある街に前途有為な若者を迎え、「はこだて未来大学」が大きく化けて、函館から未来に向かって新しい知識が発信されることを期待して、私のお祝いの言葉と致します。
 本日は誠におめでとうございます。
[2000年6月10日 公立はこだて未来大学講堂]