東京都立大学五十年史「刊行の辞」
東京都立大学は1949年に首都東京の学術研究の中心たる総合大学として設立され、この6月で開学50周年を迎えた。記念事業の一つとして『東京都立大学三十年史』以降の20年間の本学の足跡を記録してこれまでの歩みを振り返ると共に、来るべき世紀への道標とすべく、『東京都立大学五十年史』を刊行することにした。
この20年間特に最近の10年間は、本学にとって激動の時代であった。最大の出来事はキャンパスの移転である。これは本学開学以来最大の事業であることはいうまでもないが、我が国で初めての総合大学の全学一斉移転であった。この大事業により本学はハード面において面目を一新し、キャンパスを見に来て出願を見合わせたという受験生の逸話は昔話となった。
移転して息をつく間もなく、ソフト面の改革に着手した。大学設置基準が大綱化されたのを受けて1992年に「将来計画委員会」を設置し、全学の総力を結集して取り組んだ結果、カリキュラム改革、大学院の拡充、講座再編、自己点検・評価活動の推進等が実施されることになった。更に、都市研究センターを発展させて、都市研究所と大学院都市科学研究科を設置し、開学以来本学の特色として取り組んできた都市及び都市問題の研究の充実をはかった。又、都民の生涯学習の場として「都民カレッジ」を開設する等、「開かれた大学」としても都民の期待に応えている。
本学の正門に「日就月将」と書かれた石碑がある。当時の鈴木都知事の揮毫により、新キャンパスへの移転を記念して建てられたものであるが、この『詩経』から採られた詩句「日に就り月に将む」はまさに日々研究・教育に邁進してきた本学の足跡そのものを表わしているといえる。本学がこの50年間に築いてきた輝かしい実績を踏まえ、国際都市東京の学術研究の中心として新しい時代に相応しい「個性ある大学」として更なる発展を目指し新たな歴史を作るべく、これからも「日就月将」であり続けたい。そのためにこの『東京都立大学五十年史』が役立つことを願ってやまない。
最後に、本史の刊行に当たって、資料の収集・整理にあたって下さった編集委員会の委員各位並びに事務局担当者に心より感謝の意を表したい。併せて、執筆に御協力頂いた教職員及び関係者各位にも厚く御礼を申し上げる。
[『東京都立大学五十年史』所載]