大学評価・学位授与機構教授就任挨拶

 本年4月から客員教授に採用して頂き、6月から専任教授として勤務することになりました。この3月まで東京都立大学に勤務していましたが、初任が東京工業大学助手でしたから、34年2ヶ月ぶりの国家公務員への復帰です。しかし、大学評価・学位授与機構は来年度法人化されることになっていますから、「束の間の国家公務員」ということになります。
 私はこれまでいくつかの国立大学の外部評価、大学設置審議会の設置審査など大学を「評価する側」の仕事も経験してきましたが、基本的にはこの3月までは「評価される側」でしたから、攻守ところを変えたことになります。
 機構には、これまで創設準備委員や評議員、在り方検討委員などとして関わりを持ってきましたので、「右も左も分からない世界」ではないと思っていましたが、中に入ってみて、「評価」は「する側」にとっても「される側」にとっても莫大なエネルギーを必要とする事業であることを改めて痛感しています。
 「評価」は教育・研究活動の改善を目的として実施されるものですから、「評価に投入したエネルギー」を上回る改善効果がなければなりません。従って、「評価」自身の目的達成度に対する「評価」、即ち「評価」のコスト・パフォーマンスの検証が不可欠であると考えています。
 機構の評価事業はこれまでは国立大学だけを対象にしてきましたが、14年度着手分から希望する公立大学も対象に加えることになり、現在9校の公立大学が評価を受けています。公立大学を評価する際には、設置者が多様であることに留意する必要があります。つまり、全ての国立大学が国という共通の設置者を持つのに対して、公立大学は原則として大学毎に設置者を異にしており、大学に対する考え方や姿勢が設置者毎に大きく異なるからです。地域の期待を担い住民の熱意に支えられて開学したにも拘わらず、開学から年月が経過し、首長が代替わりを重ねるうちに、大学の存在そのものに疑問を抱かれる例も生じてきます。また、例えば、「学生の就職支援」「留学生支援」などはどの公立大学でも可能な限りの努力をしていますが、そのために必要な人員の配置や予算措置などは設置者の姿勢によって大きく異なっているのが実情です。「改善を要する」との指摘を受けた場合の対応も、設置者によって大きな差異が生じるでしょう。更に、公立大学の設置者である都、道、府、県、市、一部事務組合には高等教育行政の専門家が存在しないことも「評価」に対する対応に大きな影響を及ぼすと考えられます。従って、公立大学は、「大学」と「設置者」とを「一体として」評価しなければ正当な評価は出来ません。国立大学は、法人化された暁には「認証評価」と「国立大学法人評価」が義務付けられることになっていますが、公立大学の場合は、法人化されるか否かに拘わらず、「設置者」を視野に入れた評価をしなければならないと思います。
 34年間の公立大学勤務と、長い間「評価される側」に身を置いた経験を活かして、コスト・パフォーマンスの高い評価の実現に貢献したいと思っています。
[機構ニュース第30号所載]

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