新世紀めざし漕ぎ出せ漕艇部

 都立大学は今年開学50周年を迎えました。同じく創部50周年を迎えた漕艇部の満50歳の誕生日を、現役ならびにOBの部員の皆さんと共にお祝いしたいと思います。
 数多くの体育会所属運動クラブの中でも、漕艇部は現役・OBを含めて部員の団結が最も強いクラブの一つではないでしょうか。卒業してしまうと母校のことなどすっかり忘れてしまう人が多い昨今、50歳の誕生祝がこのように盛大に行われることは本当に嬉しい限りです。
 私と漕艇部の接点は、漕艇部第38期生の仲丸始君が卒業ゼミで私の学生だったことでした。漕艇部のことは鴇田先生からもしばしば伺っていましたが、誠に申し訳ないことに、私自身は未だかつてボートの試合というものを見たこともなく、ボートに乗ったこともありません。なぜなら、実は私は「生まれてこの方泳いだことがない」という「大記録」の保持者だからです。従って、ある程度以上大きな船には乗りますが、所謂ボートは記録を断ち切る恐れがあるので、絶対に乗らないようにしています。このような私から見れば、ボートをオールで自由自在に操って競技するなどということは、まるで神業としか思えません。
 多くのスポーツは、高校時代に専門的な訓練を受けたかどうかで差がつくものです。その点、ボートは殆ど全員が大学に入ってから始めるという公平性が魅力の一つということができます。しかし何と言ってもこの競技の醍醐味は、仲間との連帯感、一体感にあると言えるでしょう。仲間と力を合わせ呼吸を合わせて必死にオールを動かす、人艇一体となったその数分間のうちに、品位・情熱・協調など人間として大切なバックボーンを形成することができるのです。漕艇部の皆さんはボートで培った頑健な身体と強靱な精神力とで、この混迷する世紀末の荒波を乗り切り、新たな時代に船出して行かれることでしょう。
 日本中の大学は今、生き残りをかけて改革に取り組んでいます。本学も例外ではなく、21世紀の社会に相応しい大学づくりを必死で進めているところです。都立大学丸も漕艇部の皆さんと共に新世紀に向けて力強く漕ぎ出したいと思っています。都立大学漕艇部の創部50周年を心からお祝い申し上げるとともに今後の益々の御活躍と御発展を祈念致します。
[『東京都立大学漕艇部創部五十周年記念誌』所載]