学長走る
「府大戦に勝った」という話は珍しさを伴わなくなりましたので、今年は別の話題をと思いつつ、やはり就任早々の南学長をお迎えして開催した第49回府大戦のことに全く触れないわけにはいきません。今回の府大戦、南先生は突発的な公務のために戦場に遅参、しかも武士の魂ともいうべきラケットを持たずに丸腰での御登場ということに相成りました。開会式を終えたらすぐ大阪にとって返すといわれるのを、「学長がいなくても公務は滞りませんから、最後まで応援していって下さい。第一、私とテニスの対戦をしないで帰るのは心残りでしょう」などと言って無理矢理お引き留めしました。今年の開会式は大学対抗リレーが新企画として盛り込まれ、両校の各運動部から代表選手が1名づつ出て競走することになっていましたが、両学長が最終ランナーとして走ることが急遽決まったので、大急ぎで運動靴を借りて走路に立ちました。結果は、学生諸君が大差を付けてくれたお陰で都立大が勝ちましたが、「若いときから鍛えた南学長の走りは流石に違う、もし学長同士の個人戦だったら、府大に軍配が上がったであろう」というのがもっぱらの評でした。
結局、南学長は閉会式まで居て下さり、テニスの対戦も七つ道具を現地調達して実現しました。テニスは、数年前の府大戦の折に私に敗北を喫して以来臥薪嘗胆幾星霜、特訓を重ねて格段に腕を上げられました。今や完全に脱帽です。
応援の合間に両大学の改革の進捗状況などについて語り合い、厳しい改革の嵐に直面している点では何処も同じということが分かりました。東京では都立の4つの大学の統合を前提として、入試や教育の改革、先端科学分野の強化と産学連携の推進、ビジネススクールやロースクールの設置など21世紀の大学の在るべき姿を追求する一方で、法人化をはじめとする管理運営面の改革を迫られています。文部科学省が提唱する「トップ30」大学として生き残るためには研究・教育レベルの維持が生命線であると考える教員側と、「都民へのサービス」を最優先に考える設置者側とが熾烈な鬩ぎ合いをしているところです。大阪府大も大同小異の状況にあると思います。時を同じくして誕生し、切磋琢磨しながら成長してきた両大学が21世紀に相応しい大学として飛躍し、ともに益々発展できるよう願っています。お互いに頑張りましょう。
[大阪府立大学東京同窓会々報第10号所載]