大学改革の現段階

 世紀の変わり目に合わせるかのように、社会は転換期を迎え、様々な分野で長らく支配的であった考え方や社会のシステムが崩壊しつつある。大学も例外ではあり得ず、国立大学の独立行政法人化を筆頭に、研究機関・教育機関としての在り方を根源から問われており、日本中の大学は存立を賭けて必死に改革に取り組んでいるところである。
 そのような状況を受けて、本学では、開学以来50年間積み上げてきた実績を礎として更なる発展を目指すべく、昨年4月以来全学を挙げて改革の検討を進め、本年2月に「東京都立大学改革計画2000」をまとめた。そこでは、「都立大学のあるべき姿」として
 ・最先端・最高水準の研究・教育を担う総合大学  ・地域社会に深く根ざした「開かれた大学」
を掲げ、以下の3点を改革の主要な柱と位置付けた。
第1の柱:教育改革
 ・教育体制の再構築:教養教育、基礎専門教育、高度専門教育の体系化
 ・大学院の部局化
 ・高度専門教育の充実:今まで、特に文系においては大学院の機能を研究者養成に特化していたが、人文科学高度専門コース、ロースクール、MBA、統合先端理学専攻、総合工学コース等を新設することにより高度専門教育の機能を強化する
 ・B類制度の見直し
第2の柱:社会への貢献
 ・産学公連携の推進
 ・地域社会への貢献:社会人の受け入れ、地域社会との連携
第3の柱:「都立」の総合大学であることの特色の追求
 ・大学院都市科学研究科の拡充・改組
 ・都市研究所の発展

 上記の「東京都立大学改革計画2000」のまとめと相前後する2月中旬、石原都知事から突如「都立の大学を束ねて、ダイナミックな方法でドラスティックに大学を変える・・・」(心の東京革命について知事と討論する会において)という発言がなされ、これが新聞等で「都立の4大学統合構想」として報道された。一方、知事は都立大学に対して「既成のものとは異なる一流の大学を目指してドラスティックな改革をして欲しい。そのための良いアイデアを9月までに持ってくれば最大限応援する」と明言している。現在の知事の都政改革推進の手法を考えるならば、これらの発言が本学の改革に対して持つ意味は重大であり、4大学が連携しつつ、速やかに大学のペースで「日本の高等教育をリードする大学」を構想し、広く都民の支持を得ていかなければならないと判断される。そのために全学から数名の方々に補佐をお願いして「大学改革総長室会議」を組織し「東京都立大学改革計画2000Ver.2」の策定に向けて総長原案を作成する作業を進めている。そこでは大学に対する新たな要請を受け止め
 ・入学システムの改革:都立高校との連携
 ・学部及び大学院における教育システムの改革
 ・学部・研究科の再編
 ・魅力ある新学部・新研究科の設置
 ・産学公連携の斬新なアイデア
等を中心に活発な議論を進めている。
 この未曾有の大学存亡に拘わる危機を、むしろ、大学発展のビッグチャンスと前向きに捉えて、都立大学の明るい未来を切り拓きたい。次の時代の都立大学のために、「小異」を捨てて改革の「大同」に全学の英知と情熱を結集して頂きたい。全学の皆さんの建設的な御意見を
kaikaku@metro-u.ac.jp
宛てにお寄せ頂ければ幸いである。
[『大学広場』2000年3月31日号所載]