「21世紀の都立大学」づくり

1 改革の基本方針

 本学は、開学以来50年間積み上げてきた実績を踏まえつつ、21世紀に相応しくかつ世界に誇れる大学として更なる発展をすべく改革案を検討し、昨年「東京都立大学改革計画2000」及び「新・東京都立大学改革計画2000」を策定し、その内容を知事に報告した。そこに述べられている基本理念は「最先端・最高水準の研究・教育を担う総合大学」かつ「社会に開かれた大学」をめざすというものである。
 東京都は、都立4大学がそれぞれの立場からまとめた改革構想をもとに「東京都大学改革基本方針」を策定し2月9日に発表した。そこでは、都立の大学としての存在意義を明確にするために「知の創造拠点として国際的にも存在感のある大学」「都市の活力生成拠点として東京の発展に貢献する大学」「学術・教育・文化等の交流拠点として都民が活用できる大学」を基本理念に掲げ、改革の主な課題として「教育機能の強化」「社会への貢献」「都民から信頼される運営体制の確立」「4大学の再編・統合」「法人化問題」等を挙げている。今後、都立の4大学はこの「基本方針」を基に改革の検討を進めていくことになる。

2 改革の今後の進め方

 東京都は3月に教育庁内に「大学改革推進会議」を設置し、その下に「幹事会」及び複数の小委員会を置いて、上記の「基本方針」を具体化するための「東京都大学改革大綱」を夏までに策定すべく、作業を開始した。
 一方、学内においては、磯部改革推進本部長と数名の総長補佐を中心に、上記の「大学改革推進会議」の動向を睨みつつ、都立大学の立場から「改革大綱」に向けて各項目の具体的な検討を進めている。検討結果を随時教授会・評議会に諮りつつ意思決定をしていきたい。

3 改革の方向性

 これまでの大学は「象牙の塔」などといわれ、一般社会から超越し孤高を持する存在であった。しかし、これからの大学は、外部に開かれた場において、高度な研究とそれに裏付けられた教育とが一体的に行われる中で、多様な「知」が触発・連携し合うことによって発展していかなければならない。その意味で21世紀の大学に必要なものは「ネットワーク」である。人と人とのネットワーク、大学間のネットワーク、研究機関とのネットワーク、産業界や行政とのネットワーク、地域社会とのネットワーク等様々なネットワークを構築して、社会に開かれ、国際的に開かれた大学として発展していかなければならない。改革の最大の柱は、都立の4大学を再編・統合することによって学内のネットワークを強化し、アカデミック・パワーの総和増大を図ることである。総合大学の特性を活かして文系、理系といった分野を超えたネットワークを強化することにより、21世紀に相応しい研究・教育を実現していきたいと考えている。具体的には、学部教育の再構築、都市研究の充実、プロフェッショナルスクールの設置、21世紀をリードする新領域科学の研究・教育体制の構築、「飛び級修士」「飛び級博士」への積極的取り組み等を実現していきたい。また、高校とのネットワーク強化により、高大連携教育の実施や入学者選抜方法の見直しなども検討すべきである。

3 改革の方向性

 現在進行中の改革は、都立4大学の改革として教育庁の所管で進められているが、本学としてはあくまでも21世紀に相応しくかつ世界に誇れる「都立大学」の在るべき姿を追求していくことを目的として進めている。この改革が単に経済効率向上の手段であってはならないし、また改革の結果、研究・教育の水準が低下したり、受験生に人気が無くなったり、国際的な評価が低下したりするようなことがあっては断じてならない。そのために、守るべきは断固として守り、改めるべきは決然と改めていかなければならないと肝に銘じている。学内においても考えが異なったり利害が対立したりすることがあるとは思うが、都立大学百年の計のために小異を捨てて大同に付き、全学一丸となって前進して頂きたい。
 大学改革に関する情報を都立大学のホームページに掲載することにしたので御覧のうえ、建設的な御意見を kaikaku@metro-u.ac.jp 宛にお寄せ頂ければ幸いである。
[『大学広場』2001年3月31日号所載]