もう一つの府大戦・もう一つの横市戦

 光溢れる4月を迎え、キャンパスの樹々が活動を開始しました。体育会の学生諸君も新しい年度の諸行事に向けてウォーミングアップに励んでいることと思います。
 都立大学体育会の行事といえば真っ先にあげられるのは大阪府大戦と横浜市大戦です。特に、府大戦は今までに46回を数え、本学の歴史が今年で50年であることを考えると、大変に伝統ある行事ということができます。毎年7月になると
   有朋自遠方来
ということで、スポーツ交歓に大いに汗を流し、その後はビールで乾杯をして
   不亦楽乎!
と感嘆することになります。両校が遠隔の地にあるにも拘わらずこれほど親しく交流が行われているのは、実に素晴らしいことです。
 私自身は1991年以来毎年府大戦に参加してきました。熱戦を展開する選手諸君や応援に声を張り上げている諸君を見ていると「これが青春だ!」と実感します。数年前に教職員の間から「我々も親善試合をしましょう」という声があがり、テニス、ソフトボール、卓球が行われるようになりました。学生諸君のみならず我々も応援の合間に府大の教職員の方々と交流を深めることができ、誠に有意義な3日間を過ごしています。今のところ、テニスは都立大が圧勝、卓球は府大が圧勝ですが、“圧巻”は何といってもソフトボールにおける山住総長の名キャッチャーぶりでした。御本人は「学生時代は野球部で鳴らし、不動の二塁手だった」と豪語していますが、我々が確認できたのは“不動”の捕手でした。球がこぼれても決して拾いに行かないので、審判や控えの選手が拾って返球するのです。「動かざること山の如し」、いや、「山住の如し」というべきか。山住捕手は懸命に「盗塁無し」を主張しましたが受け入れられず、府大の打者は出塁すれば自動的に本塁に還ることができました。グランドが爆笑の渦につつまれたあの楽しいひとときの思い出は「府大戦意外史」の第1頁に載せて永く記録に留めたいと思っています。
 一方、横市戦は府大戦に比べると新しく、これまで17回の歴史ですが、地理的に近いこともありもっと盛り上がることを期待しています。我々教職員はここ数年横浜市大の先生方とテニスの対抗戦を続けています。戦績は学生諸君と同様に目下全勝ですが、市大の先生方は専用のコートを新設して練習に励み次第に腕を上げているので安心してはいられません。特に横浜市大の加藤学長はなかなかの強敵です。右足を挙げる独特のフォームでサーブを打たれるので「先生ーっ、電柱が要りますかぁ?」と呼びかけると「あったほうがいいですねー」と答えながら素晴らしいスピンサーブが入ってきます。これも永く記憶に留めたい両校交流の歴史のひとこまです。
 もうすぐ21世紀です。心身共に鍛えて新たな時代を迎えましょう。
   新世紀目指して飛ばむ都鳥
[『みやこどり』1999年度版所載]