「フレームショット」と「エアーショット」
─私流スポーツの楽しみ方─

 2000年代最初の新入生を迎え、キャンパスは活気に溢れています。体育会の学生諸君も千年に一度のこの記念すべき年度を充実したものにすべく、諸行事に向けて活動を開始していることと思います。
 スポーツに汗を流すことは素晴らしいことです。私もスポーツが大好きで、高校生の時に卓球に夢中になったのを始めとしてゴルフ、テニス等いろいろなスポーツを楽しんできました。但し、スポーツなら何でも好きという訳ではなく、かなり好みが偏っています。私は信州の出身ですから「スキーやスケートは得意でしょう」といわれますが、実はどちらも殆どやったことがありません。スケートは子供の頃に下駄スケートで転んで尾てい骨を打った時の痛さに懲りて早々に撤退、スキーは高校2年生の時の合宿で全くその才能がないことを悟ってこれもさっさと見切りをつけました。爾来スキー、スケート、○○等「すべるもの」は敬遠しています。
 社会人になってからは一時ゴルフに集中しました。日本では一度もプレイしたことがありませんが、30代初めにミシガン州立大学に滞在していた時には、キャンパスに立派なコースがあり安かったので、週に2、3回は行きました。意に反して小さい球を打たずに大きい方の球を打つことが屡々ありましたが、あの大きな球はいくら打ってもびくともしませんでした。
 最近は専らテニスを楽しんでいます。テニスは40歳を過ぎてから始めたので、いわゆる「おじさんテニス」です。学生時代からやっている同僚は「若い頃にはこんな球は楽にとれたのに!」といって悔しがりますが、私はそのようなことはありません。因みに私の得意なショットは「フレームショット」と「エアーショット」です。興味のある諸君には何時でも極意を伝授しますから申し出て下さい。
 ところで、都立大学には教職員テニスクラブがあり、そこでは「荻上とペアを組んで優勝できるか」という難しい試験があります。この難問に挑戦して合格した人はこれまで2名ですが、かつて庭球部には「(当時の鴇田)学生部長と組んで都立大オープンに優勝する」という快挙を何度も成し遂げたK君という猛者がいました。学生諸君の中に「総長と組んで都立大オープンに優勝できるか」という超難問に挑戦してみたいという果敢なチャレンジ精神の持ち主はいませんか?
 最後にスポーツに関する私の“自慢”を披露します。それは「生まれてこの方一度も泳いだことがない」ことです。「要するにお前は泳げないのだろう」と云われますが、泳げるかどうか試したことがないので分かりません。この“大記録”はこれからも更新していく心算です。
 学生諸君も本学の恵まれた環境と整った体育施設を活用して、思い切り青春の汗を流して下さい。スポーツは身体を壮健にし、精神を鍛錬し、友情を育み、人生を健康で楽しいものにしてくれるでしょう。
[『みやこどり』2000年度版所載]