都立大学五十歳而設立出版会

 都立大学はこの度開学50周年を迎えた。この間、人材に恵まれて研究・教育上の成果は赫々たるものがあり、キャンパスも他を圧倒する程立派になっにも拘わらず、何故か「画竜点睛を欠く」の感があった。本学関係者の著書には優れたものが多い。また本学では学術雑誌や研究叢書、白書の類も刊行している。然し、自前の出版会を持っていないために、「都立大学」の名前で出版することができなかった。学術の研究・教育を活発に行っている大学が、その成果を発表する自前の手段を持っていないのは致命的ですらある。多くの関係者がこのことを残念に思い、長年にわたり各方面から「都立大に出版会を」という声があがっていたが、なかなか実現できなかった。
 その長年の夢であった出版会が、この度開学50周年記念事業の一環として実現したことは誠に喜ばしい。50歳は論語に言う「知命」である。大学がその知的創造の成果と蓄積を広く社会に還元することは、基本的な使命である。本学が「出版」の機能を得たことは、その使命を具現化する手段を備えたことになり「知命」の年に誠に相応しい。これからは、本学の教員の研究成果に基づく著書や教育理念に沿った教科書が都立大学出版会から刊行されることになる。特に、極めて重要な研究成果であっても発行部数が少なくて商業出版では採算が採れないようなものは今までは日の目を見ることができなかったかも知れないが、これからは都立大学出版会から世に出ることが可能になる。都立大学はこれで“一人前の大学”になったといえる。都立大学出版会から続々と良書が出版され、洛陽の紙価を高からしめることを願ってやまない。
 出版会の設立に御盡力頂いた教職員各位並びに資金面で御協力下さった方々に心から御礼を申し上げ、感謝の意を表したい。
[東京都立大学出版会会報『八雲』No.1所載]