公立大学協会50年史の刊行にあたって

 公立大学協会は「公立大学相互の協力によって、公立大学の使命達成に寄与する」ことを目的として1949年10月に設立されました。公立大学協会では今年設立50周年を迎えるのを記念して『公立大学協会50年史』を刊行致しました。1949年という終戦直後から始まる50年間は、我が国の戦後の混乱と復興の時期から、高度経済成長、バブルの時代そして現在へと、まさに激動の時代でした。公立大学はこれらの時代を通じて高等教育の一翼を担い、国立大学・私立大学と並んで我が国の高等教育を担う重要な位置を占めるに至りました。公立大学の中には大都市に設置された総合大学もありますが、地域の特性を反映した個性的な大学も多く、医・歯・薬・看護・社会福祉・生活科学・家政系等の大学は地域住民の健康と生活に貢献し、経済・商・工・農・情報系等の大学は地域の産業・経済の発展に寄与し、文・法・理・国際・芸術系等の大学は人材育成に貢献するとともに、地域の学問・文化の中心として重要な役割を果たしてきました。
 公立大学の歴史は1919年に始まります。然し、公立大学は限られた地方財政の中で運営されるという構造から、金融恐慌等社会経済の影響による地方財政窮迫の事情で多くが国立に移管され、戦前開設された5校の公立大学のうち戦後まで公立として引き続いたのは2校のみでした。公立大学協会はこの2校を含む33校で1949年10月22日に発足しました。その後、加盟校が三十数校という時代が長く続きましたが、ここ数年各地で公立大学の新設が相次ぎ、現在では66校を数えるに至りました。全国66校の公立大学はそれぞれ設置者や沿革は異っていますが、いずれの大学も地方の高等教育に対する要請のもとで明確な目的意識をもって設立され運営されているという事情は共通しています。本協会は公立大学が限られた条件下で効果的に運営され「地域の要請にこたえる研究と教育の創造」という使命を達成できるよう全国の加盟校と相互協力をはかり、共に歩んできました。
 長い間、公立大学は国立と私立の間にあって数も少なく地味で目立たない状況が続いていましたが、ここ数年わが国の高等教育が転換期を迎え、各地で個性的な公立大学の新設が相次ぎ、社会の注目を集めています。来るべき21世紀には公立大学が我が国の高等教育の中で更に重要な地位を占めるとともに、公立大学協会も大学間の交流を活発にし叡智を結集する活発な活動が期待されます。本書の刊行を機会に公立大学及び公立大学協会の50年の活動について広く社会に理解して頂くとともに、50年を契機として歴史を振り返り新たな時代に相応しい公立大学の発展に資することを願っています。
 本書の刊行に御尽力頂いた編纂委員各位、特に執筆にあたられた東京都立大学の大串隆吉先生、横浜市立大学の高橋寛人先生、高崎経済大学の西野寿章先生、並びに事務局を担当した東京都立大学の佐藤賢、菊田亜紀両氏及び企画調査専門委員の光本滋、安井崇両氏に対し心から感謝の意を表したいと思います。
[『公立大学協会50年史』所載]

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