卒業生に贈ることば

関係的自立の実践

 卒業生及び修了生の皆さんの希望に満ちた門出を祝福するとともに、これからの皆さんの人生が充実したものとなることを願って已みません。
 大妻女子大学は皆さんに「短期大学士」、「学士」、「修士」及び「博士」の学位を授与しました。これらは皆さんが「自ら学ぶ力」を身につけたことを、本学が社会に対して保証するものです。しかし、皆さんは今後どのような分野で活動するにせよ、大学で学んだ 知識だけで間に合うということはあり得ません。社会に出れば学習に次ぐ学習が必要になることは、昨今の激動する世相を見れば容易に想像がつくでしょう。 日々に自己学習を重ねながら、常に問題意識をもって事に当たり、自ら問題を発見し、自らその解決方法を考えることになります。「主体的に考え、生涯学び続ける」ことを忘れないで下さい。
 皆さんは、大妻女子大学在学中に、「関係的自立」をキーワードとする教育を受け、豊かな教養と思いやりの心を持って社会的・職業的に自立する力を身につけたはずです。自信を持って一歩を踏み出して下さい。昨今は、他者とスムーズなコミュニケーションが図れない若者が増加し、社会的自立が図れない者や「独善的自立」、「利己的自立」、「排他的自立」など好ましくない自立をしている者が多く見られますが、皆さんには在学中に学んだ「関係的自立」を着実に実践して欲しいと思います。
 「関係的自立」を実践するに当たって、校訓「恥を知れ!」を忘れないで下さい。これは、自らを戒めるための言葉です。人生の「美学」を持ち、「品格」ある女性であり続けて下さい。
 皆さんはこれから「グローバル化」が進行する社会で生きていくことになります。広く世界に目を向け、異文化に接する機会を持って欲しいと思いますが、その際に日本の文化に誇りを持つことを忘れないで下さい。日本文明は、中華文明、ヒンドゥー文明、イスラム文明、東方正教会文明、西欧文明、ラテンアメリカ文明と並んで世界七大文明の一つです。
 長引く不況や東日本大震災、外交上の難問などのために、我が国は自信をなくしているのではないでしょうか。私は皆さんを送り出すにあたって、「自信を持て」と声を大にして言いたいと思います。ロンドンオリンピックにおいて、日本の女子選手達は華々しい活躍をしました。日本人であること或いは日本で育ったこと、そして何より大妻女子大学で学んだことを誇りにして下さい。
 皆さんはこれから社会に出て、様々なことを経験しながら成長し続けることになります。嬉しいことがあった時、困難に直面した時、学問や社会の新しい展開について学ぶ必要がある時など、何時でも気軽に母校を訪ねて下さい。教職員一同皆さんの訪問を楽しみにしています。また、大学祭やホームカミングデーなどには是非里帰りして後輩達を励まして下さい。大妻女子大学は皆さんの故郷です。
[千鳥会会報 平成24年度卒業記念号所載]