学生が主体的に学ぶ空間

 千鳥会の皆様には、本学の教育研究活動に対する御理解と多大な御支援を賜り、誠に有り難く厚く御礼申し上げます。
 学長を拝命して、早いもので一年が経過致しました。この間、大妻女子大学が輝きを増していくためには何を為すべきかについて、学内外の叡知を集めて検討を進め、教育の実質化と国際性の強化を中心として改革に取り組んできました。現在我が国では、大学・短期大学への進学率が56%を超えていますが、それでも先進諸国の中では、高等教育を受ける者の比率は低い方に属します。昨今、「高学歴低学力」、「高学歴無教養」、「国際通用性がない」などといわれる中で、国を挙げて様々な検討を進めていますが、大妻女子大学では、真に自立した女性を育成する教育の更なる充実に向けて努力を続けているところです。
 大学を卒業すれば、社会的・職業的に自立することが求められます。そのためには、幅広い教養と自ら学ぶ力が不可欠です。このことから、我々は、大学の教育において最も重要なことは知識を授けることではなく、「学び方」を修得することであり、「主体的な学び」、「生涯学び続ける習慣」を身に付けることであると考えています。
 ところで、我が国では、小学校で学ぶ者は「児童」、中学校や高等学校で学ぶ者は「生徒」と呼ばれ、大学で学ぶ者は「学生」と呼ばれてきました。学校教育法や大学設置基準においても、大学で学ぶ者は「学生」と明記されています。「学生」と「生徒」の違いは「主体的な学び」です。ところが近年、大学で学ぶ者が「生徒」と呼ばれることが珍しくなくなってきました。教職員が自分の勤務する大学で学んでいる者を「生徒」と呼び、大学生が自分達のことを「生徒」と呼ぶのです。教員は、自分が教えている者が「学生と呼ぶに相応しくない」と考えて「生徒」と呼んでいるのでしょうか。学生は、自分が「何時までも生徒であり続けたい」と考えて「生徒」と自称するのでしょうか。私は入学式において、「皆さんの多くはこの間まで生徒だったと思いますが、今日からは学生です」と話しました。大妻女子大学は「生徒に勉強して頂く大学」ではなく、「学生が主体的に学ぶ大学」であり続けたいと思います。
 更に、これまで大妻女子大学においては、外国人留学生が極めて少なく、また在学中に海外留学を経験する学生も決して多くはない状況が続いていましたが、この四月に「国際センター」を設置して様々な活動を進める中で、改めて海外留学に強い関心を持つ学生が多いことが分かりました。
 引き続き、学生のニーズに応え、社会の期待に応える教育の実践に努めていきます。今後とも変わらぬ御支援を賜ります様お願い申し上げます。
[千鳥会会報 85号所載]