グローバルに通用する教養人

 千鳥会の皆様には、大妻女子大学の教育研究活動に対する御理解と多大な御支援を賜り、誠に有り難く厚く御礼申し上げます。
 学長を拝命して、早いもので二年が経過致しました。御蔭様で、この間、千代田キャンパスの校舎改築による学習環境の改善が進み、また秋には念願の学生食堂が開業する予定です。さらには、学生寮も、久我山寮に続いて加賀寮が来春に新築再開寮するなど、ハード面からの環境整備が着々と進展しています。
 一方で、我が国の高等教育は「量」の時代が終わり「質」の時代に入っています。大学は、質の高い卒業生を送り出すことによって社会から評価されます。昨今、大学の卒業生が「高学歴低学力」、「高学歴無教養」、「英語も使えない」、「国際通用性がない」などといわれる中で、国を挙げて様々な改革への取組が進められていますが、大妻女子大学では、建学の精神に基づき、「関係的自立」をキーワードとして、真に自立した女性を育成する教育の更なる充実に向けて努力を続けているところです。
 教育基本法において、大学は「高い教養」と「専門的能力」を培うことが求められていますから、「高学歴無教養」は教育基本法違反!ということになります。我が国の大学では、ともすれば専門的能力の育成に重点が置かれがちですが、私は、専門的能力が活かされるためには高い教養が前提であると考え、大妻の学生には専門分野の如何に関わらず「教養人」を目指して欲しいと願っています。
 昨今は「グローバル人材」という言葉が使われますが、私は大妻女子大学の卒業生達に、広く世界に目を向け、世界を見据えて、それぞれの専門分野で足元を固めて行動して欲しいと願っています。そのためには、世界を知ることが必要です。「百聞は一見に如かず」ですから、私は学生達に在学中に海外に出かけて異文化体験をすることを勧めています。異文化を理解するためには言葉が通じることが前提ですが、グローバルに通用する言語は英語ですから、「英語が使える」ことが「グローバル人材」であるための必要条件です。しかし、決して十分条件ではありません。「高い教養」こそが不可欠です。この必要条件を満たすための一助として、毎日学べる英語力強化プログラムを開講しています。今年度から、受講料の半額強を大学が補助することにしましたが、現在六百名近い学生が受講しています。
 また、キャリア教育の一環として、大妻マネジメントアカデミー(OMA)という課外講座を開設しています。今年度は、従来に比べて四倍以上の受講者があり、社会的・職業的自立に向けた意識の向上が感じられます。このことを、就職率の上昇のみならず、就職の質的向上に繋げることにより、「就職の大妻」の復権を目指したいと願っています。
 引き続き、学生のニーズに応え、社会の期待に応える教育の実践に努めていきます。今後とも変わらぬ御支援を賜ります様お願い申し上げます。
[千鳥会会報 87号所載]