大妻のさくらまつりと千代田学

 春といへば花、花といへば桜、今年もまた千代田区が開催する「千代田のさくらまつり」の一環として、大妻女子大学では「大妻のさくらフェスティバル2013」を主催します。千代田キャンパスにおいて、地域の活性化と地域文化の内外への発信を目的として、千代田区と区内の大学との共同事業である「千代田学」の事業報告や地域諸団体による魅力的な企画を用意してゐます。大妻女子大学は、千鳥ヶ淵や靖国神社からは目と鼻の先です。花見の序でに是非お立ち寄り下さい。
 大妻女子大学は千代田区三番町にあります。天明4年3月に江戸城中で若年寄田沼意知を斬り、「世直し大明神」と崇められた佐野善左衛門政言の屋敷があつた場所です。屋敷の庭には見事な桜があつたさうです。
   番町に過ぎたるものが二つあり佐野の桜と塙保己一
 残念ながら「佐野の桜」は残つてゐませんが、千鳥ヶ淵、靖国神社を始め千代田区には桜の名所がたくさんあります。靖国神社の桜は、明治の初めに木戸孝允によつて植えられたのが始まりとのことです。
 立春が過ぎると人々は桜の開花を心待ちにして、何かと落ち着かなくなります。
   世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし       在原業平
 靖国神社や千鳥ヶ淵が桜の名所になつたのは明治以降のことですが、上野寛永寺、浅草墨堤、飛鳥山などは江戸時代から桜の名所でした。
   花の雲鐘は上野か浅草か       芭蕉
 桜(ソメイヨシノ)が満開になると、遠くから見れば雲の様に見えます。
   おしなべて花の盛になりにけり山の端ごとにかかる白雲       西行
 河津桜や沖縄のヒカンザクラは色が濃く、長く咲き続けますが、ソメイヨシノは「花の命は短くて・・・」
   世の中は三日見ぬ間に桜かな       大島蓼太
であり、
   明日ありと思ふ心の仇桜夜半に嵐の吹かぬものかは       親鸞
です。そこが日本人の感性に合ひ、日本文化において「花」といへば「桜」を指すことになつたのでせう。
   敷島の大和心を人問はば朝日に匂ふ山桜花       本居宣長

[『大妻さくらフェスティバル2013』所載]