大妻のさくらまつりに来てみましょ

 今年もまた千代田区が開催する「千代田のさくらまつり」の一環として、大妻女子大学では「大妻さくらフェスティバル2016」を主催します。千代田キャンパスにおいて、地域の活性化や地域文化の内外への発信を目的として、千代田区と区内の大学との共同事業である「千代田学」の事業報告や地域諸団体による魅力的な企画に加えて、本学の地域連携プロジェクトの発表、俳句大賞発表、起震車体験なども行う予定です。大妻女子大学は、桜の名所千鳥ヶ淵や靖国神社からは目と鼻の先です。花見の序でに是非お立ち寄り下さい。
 大妻女子大学は千代田区三番町にあります。天明4年3月に江戸城中で若年寄田沼意知を斬り、「世直し大明神」と崇められた佐野善左衛門政言の屋敷があつた場所です。屋敷の庭には見事な桜があつたそうです。
    番町に過ぎたるものが二つあり佐野の桜と塙保己一
 残念ながら「佐野の桜」は残っていませんが、大妻女子大学の本館前には枝垂れ桜が植えられています。やがて大木に育ち、
    番町に過ぎたるものが今もあり枝垂れ桜と大妻の女子
といわれる様になることを期待しています。
 桜に因んだ和菓子の代表は桜餅ですが、焼いた薄い小麦粉の皮を筒状にして中に餡を入れたもの(長命寺桜餅)と、粒状で粘り気のある餅米の皮で餡を包んだもの(道明寺桜餅)の2種類があります。前者は関東、後者は関西が起源とのことですが、どちらも桜の葉で包んであり、良い香りがします。「桜餅」は春の季語であり、桜の咲く頃に食べますが、使われている桜の葉は、去年の葉を塩漬にしたものです。
    桜餅去年の香と今日の味
「桜」には馬肉という意味もあり、馬肉のすき焼きのことを「桜鍋」といいます。味噌仕立ての桜鍋は、文明開化以来の東京の伝統料理だそうですが、私の出身地信州では、(味噌仕立てではない)馬肉のすき焼きはごく普通の料理でした。信州では、私の子供の頃は、「肉」といえば馬肉のことを意味しました。その当時肉屋に並べられていたのは、大半が馬肉であり、牛肉と豚肉は端の方に申し訳程度に置かれているだけでした。今でも信州では、馬肉は肉屋やスーパーで売られている普通の食材です。内田百?の作品に「玄冬観桜の宴」というのがありますが、「桜鍋」は冬の季語であり、冬に食べるのが美味しいと思います。
    梓弓春まだ浅き信濃路に花より早き桜鍋かな

[『大妻さくらフェスティバル2016』所載]