心理相談センターの10周年に寄せる

 大妻女子大学の心理相談センターが開設10周年を迎えたことの慶びを、大学構成員及び関係者一同で共有したいと思います。教育、研究、地域貢献の3機能を併せ持つ同センターが、着実に実績を積み重ねて10周年を迎えたことは、歴代のセンター長を始めとするスタッフの方々の並々ならぬ努力の結果であり、心より敬意を表します。
 大学の基本的な機能は、教育、研究、社会貢献と言われます。大学が教育と研究を通じて社会に貢献することは当然ですが、心理相談センターは、地域の方々の「心の悩み」相談に応じることにより、地域社会に開かれた大学の直接的な社会貢献の場として機能しています。大妻女子大学には、この他に相談機能を有するセンターが二つあります。一つは大妻女子大学の学生を対象とする学生相談センター、もう一つは学外の方を対象とする家政学部附属児童臨床研究センターです。学生相談センターの様な学生支援組織は全ての大学に設置されていますが、心理相談センターや児童臨床研究センターの様に教育、研究、地域貢献の3機能を併せ持つセンターは大妻女子大学の特色ある取組です。
 心理相談センターが開設されてから昨年度までの9年間に822人の来談者があり、延べ相談回数は7791回を数えています。来談者は、多摩市、八王子市、町田市など東京都の西部地域を中心に、横浜市、川崎市を始めとする神奈川県や埼玉県など、かなり広範囲にわたっています。センターは多摩キャンパスの正門の近くに設置されていますが、正門とは別に専用の入口が設けられているなど、来談者に対する配慮がされています。
 大妻女子大学の心理相談センターの大きな特色は、臨床心理士を目指す大学院学生の実習の場であると同時に、地域社会に開かれた社会貢献の機能を有していることです。臨床心理士は、日本臨床心理士資格認定協会が認定する資格であり、協会が指定する大学院の臨床心理学系専攻修士課程または専門職大学院を修了することが基本要件です。本学の大学院人間文化研究科臨床心理学専攻は、協会から第1種指定大学院として指定を受けており、心理相談センターは大学院学生が臨床実務訓練を受けるための施設として機能しています。そのため、本学の大学院人間文化研究科臨床心理学専攻を修了し、臨床心理士資格試験に合格すれば認定資格が与えられます。即ち、心理相談センターは、本学の大学院人間文化研究科臨床心理学専攻が第1種指定大学院であるために不可欠な附置機関であり、臨床心理士を目指す大学院学生及び修了生のための実習の場です。医学部の附属病院が、診療機能に加えて医学部学生の臨床実習の場としての役割を担っていることと似ています。心理相談センターは、臨床心理学の研究成果を地域社会に還元すると共に、大学と地域社会の接点において臨床心理士を育成する機能を果たしています。これは、大学が地域に貢献し、地域の方々が大学の教育・研究を支える、双方向型の連携です。お陰様で臨床心理士資格試験は高い合格率を維持しています。
 センターの相談スタッフは、現在、加藤美智子所長を始めとする6名の大学院人間文化研究科臨床心理学専攻の教員と、本学大学院出身で臨床心理士の資格を持つ相談員達です。来談者に対する相談は、教員または相談員が来談者と面接して基本方針を決定し、教員の指導の下に大学院学生及び資格審査受験準備中の大学院修了生が相談を担当しています。
 設立以来順調に成長を続けて10周年を迎えた心理相談センターが、これからも地域社会に「開かれたセンター」として着実に発展を続け20周年、30周年、・・・を迎えることを期待し、大学として支援していきたいと思います。
[心理相談センター紀要 10周年記念特別号所載]