「財団法人大学セミナー・ハウス」はなかった!?

 人間が戸籍登録するのと同様に、財団法人は設立の登記をする。この度ひょんなことから名称について調べたら、40年前に東京法務局八王子支局において当財団は「財団法人大学セミナーハウス」と登記していたことが分かった。従って、この40年間当財団の公式名称は「財団法人大学セミナー・ハウス」ではなく「財団法人大学セミナーハウス」だったのである。これが一見衝撃的に見える上記の標題の意味である。
 40年前に財団法人大学セミナーハウスが八王子市郊外の野猿峠に開設した施設が大学セミナーハウスである。大学セミナーハウスでは、大きく分けて2種類のセミナー事業を展開してきた。
 一つは、各大学等が企画して大学セミナーハウスの施設を利用するセミナーであるが、施設の老朽化とともに利用者数が減少を続けているので、財団を存続・発展させるためには早急に施設の改善を図らなければならない。
 もう一つは、大学セミナーハウスが主催するセミナーである。大学教員セミナー、大学職員セミナー、国際学生セミナー、大学共同セミナーなどがあり、企画はそれぞれの委員会が担当している。これとは別に、セミナーをやろうという意欲の持ち主が企画を持ち込む公開セミナーを試行している。『「邪馬台国」はなかった』で知られる古田武彦先生を囲む古代史セミナー、中央教育審議会答申を受けて実施した「我が国の高等教育の将来像」セミナー、炭焼きセミナー、親子で学ぶ自然観察セミナーなどである。
 この40年間に大学セミナーハウス周辺の様相は大きく変わった。野猿峠周辺は、道路が舗装され、焼鳥屋が殆ど姿を消し、住宅が激増した。セミナーハウスの敷地内では樹木が生い茂り、立派な森に成長した。
 最近、敷地内を通っている市道を拡幅することになり、そのためにかなり多くの樹木を伐採することになった。その中には立派な檜が数十本あったので、建築用材に有効活用出来るものと思ったら、この程度の数では商売にならないといってどこの業者も相手にしてくれない。安い輸入建材のせいらしい。立派に育った檜に見向きもしないで安い建材を輸入するとは何事か! 山を所有する友人の話によれば、昨今は山に木を植えても採算が取れないという。こんなことを続けていると日本の山は禿山になってしまう。安易なグローバル化のために、セミナーハウスが40年間育んできた銘木が粗略に扱われたことを残念に思う。
 これからも大学セミナーハウスは「日本の」知の森を大切に育てていきたい。
[大学セミナーハウス40周年記念誌所載]

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