学士力

 今年は真夏日が随分長く続き、いつまでも蝉が鳴き続けていると思っていたら、いつのまにか金木犀が匂い始めた。北国の山には初雪が降り、富士山でも初冠雪が見られた。因みに、気象庁による「初雪」の定義は「その年の最高気温が出た日以降に最初に降った雪」のはずだが、改めて気象庁のホーム頁を覗いてみたら「寒候期(10月から3月まで)がきて初めて降る雪、霙でも良い」となっている。
 夏の間はシャワーで済ませていた人も、「あずましい」湯っこに入りたいと思う季節になった。セミナーハウスでは、松下館と記念館にユニットバスを設置したが、大きな湯船で温まりたいという御要望にお応えすべく、交友館の「大浴場」を改修した。温泉でないのが残念であるが、足を伸ばして湯船に浸かり、セミナーの疲れをほぐして頂ければ幸いである。
 大学を卒業すれば「学士」の学位が授与される。「学士の品質保証期間はせいぜい3年、長くて5年」というのは蓮實重彦元東大総長の卒業式告辞における言葉であるが、昨今では出荷時点の品質が疑われる「学士」が出回っている。中央教育審議会大学分科会では1年半を超える精力的な議論を経て、「学士課程教育の構築に向けて」と題する答申を纏めた。そこでは、学士課程の教育を実質化し「学士力」を身に付けさせるためには何を為すべきかが論じられている。我が国は世界で最も自動販売機が普及している国であるが、「学士号の自動販売機」の設置は断じて排除しなければならない。(2008年11月)
[セミナーハウスニュース第175号所載]

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