想定外

 3月11日に我が国の観測史上に類を見ないM9.0の巨大地震が発生し、東北地方から関東に及ぶ太平洋沿岸の多くの市町村が壊滅的な被害を受けた。「東北地方太平洋沖地震」がもたらした「東日本大震災」である。被災地の方々には心よりお見舞いを申し上げたい。
 震源が陸地に近く、地震発生から津波襲来までの時間が30分程度だったために、大惨事となり多数の犠牲者が出た。今回壊滅的な被害を受けた市町村の中には、防災学の専門家のアドバイスに基づいて「安全な場所」に防災センターや指定避難場所を作っていたところもあるが、そこに避難した市民の多くが「想定外」の大津波にのまれて犠牲になっている。「世界一の防潮堤」を信頼して、平穏な生活を営んできたのに、一瞬にして地獄と化した町もある。
 また、この巨大地震のために、東京電力福島第一原子力発電所において、次々と「事故」が発生した。揺れを感知して原子炉が停止するところまでは正常に機能していたが、冷却水循環装置が機能せず、それを補完するために設置されていた第2の装置も、第3の装置も機能しなかった。「想定外」の大津波に襲われて補助電源などが全て破壊されたためだと説明されている。しかし、安全性より経済性を重視した「想定」に問題があったのではないか。
 現実に起きたことに対して、責任ある立場の者や専門家達に「想定外」と言われては、犠牲者達は浮かばれない。 (2011年4月)
[セミナーハウスニュース第180号所載]

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