「履修主義」から「修得主義」へ

 何年か前に「未履修問題」が世間を騒がせたことを記憶していらっしゃる方も多いのではないだろうか。大学受験における進学実績を向上させることを重視した高等学校が、学習指導要領では必履修だが大学受験には関係ない教科や科目を生徒に履修させなかったため、卒業が危ぶまれる生徒が多数いることが判明した問題である。その際問題にされたのは、その科目を「履修」したかどうかであり、「修得」したかどうかではなかった。『広辞苑』によれば、「履修」とは「学科・課程などを習い修めること」であり、「修得」とは「習い覚えて身につけること」とされている。これでは両者の違いがよく分からないが、前者では「教員が何を教えているか」が重要であり、後者では「どれだけ学生の身についたか」、「学生は何が出来る様になったか」が重要である。
 これまでの我が国の教育は、「履修主義」であり「修得主義」ではなかった。しかし、昨今は国際的な動向として、学修成果の評価が重要性を増している。つまり、「履修主義」から「修得主義」へ移行しつつあるのである。かつては、先生が立派な講義をして、学生が理解出来なければ「学生が悪い!」といって済ましていたが、昨今は学生が修得出来なければ「先生が悪い!」のである。 (2012年11月)

[セミナーハウスニュース第183号所載]

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