ハウスの桜

 大学セミナーハウスの敷地には様々な桜が植えられてゐるが、中でも枝垂桜と八重桜が素晴らしい。東京では桜の開花がいつになく早く、枝垂桜は4月1日の新棟開館を待ちかねる様に満開になつた。
 古歌に
   散ればこそいとど桜はめでたけれ浮世に何か久しかるべき
と歌はれてゐる様に、桜といへば染井吉野がもてはやされるが、我が国にはもつと素晴らしい桜がたくさんある。例へば、三春の滝桜の様な名木の数々、伊豆半島の河津に原木がある河津桜、沖縄の本部半島八重岳の寒緋桜など。1月下旬に仕事で名護市を訪れた際に、満開の桜並木が数キロ続く八重岳の山道を走つてみたが、絶景であつた。
   河津では梅より早き桜かな
といふ句がある様に、河津桜や沖縄の寒緋桜は咲く時期が早く、開花期間が1ケ月以上に及ぶので、
   世の中は三日見ぬ間の桜かな
といふことはない。因みに、この句は天明期の俳人大島蓼太の作で
   世の中は三日見ぬ間に桜かな
が本来の形らしい。
 セミナーハウスでは、新棟の前に数本の見事な枝垂桜があるのに因んで、新棟を「さくら館」と命名した。枝垂桜に加へて、河津桜を植えて、美しい桜の林にしやうと計画してゐる。(2006年4月)
[セミナーハウスニュース第170号所載]

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