川中のわき出る湯にて尻を焼き

忘月忘日 入間から圏央道に入って関越道を沼田まで走る。今日は朝から暑かったが、途中、高崎辺りで車に付いている温度計が39度を示していた。
 昼を食べるために沼田駅前に行って「そばしん」を探す。駅前通りから細い小路を入ったところにあった。物の本にお奨めとある「三味そば」を食べた。店内に柳家小さんの写真と色紙が飾られていたのを見て、禿頭の話に暫し花が咲く。
   世の中は澄むと濁るで大違い刷毛に毛があり禿に毛が無し
 沼田公園にある旧生方家住宅、生方記念資料館、旧土岐邸洋館を見学した。生方家は沼田藩の薬種御用達を勤めた商家、土岐氏は沼田藩主である。
 沼田の名物東見屋の味噌饅頭を食べようと思い、市役所に車を停めて買いに行った。目の前で焼いてくれるのを待ったが、それにしても暑い。未だ「餓」ではないので、後の楽しみということにして走り出した。
 「日本ロマンチック街道」と呼ばれる国道145号線を中之条町に向かって走ったが、何時まで経っても「ロマンチック街道」と思われるものは何も見当たらない。所々に待避所が設けられているのは、そこに車を停めてロマンチックなことをするためかも知れない、それで「ロマンチック街道」というのだろう等とこじつけながら走った。
 中之条町の伊勢町上三叉路でうっかり右の国道353号線に入ってしまい、暫く走って気付き引き返した。改めて、吾妻川と吾妻線に沿って145号線を走る。川中温泉口を過ぎて少し行ったところに、「日本最短の鉄道トンネル」というのがあった。なるほど短い。更に少し行った辺りが吾妻渓谷である。車を停めて渓谷に下りてみた。紅葉の季節に来れば綺麗だろうと想像される。
 長野原の「須川橋」という交差点を右折して国道292号線を北上する。暫く行くと六合村に入り、村役場を過ぎて少し行った所に「湯の平温泉」の看板が出ていた。その先で草津方面に行く道と分かれて、国道405号線を5分程走った所に「花敷温泉・尻焼温泉」の看板があり、左折した所が花敷温泉、その直ぐ先が尻焼温泉である。川底から湯が湧き出ていて、川そのものが露天風呂になっていることで知られている。
 今日の宿は「光山荘」である。玄関に歓迎の名札が下げられている。小さな宿だが、団体が2組あってかなり混んでいる。厠の前の部屋に案内された。
 川の中にある露天風呂に行ってみたが、大変な賑わいである。旅館は3軒あるが、宿泊客以外にも車で大勢来ているようだ。勿論無料で混浴である。
 夕食は広間で食べ、小雨が降っていたので内湯に入ったが、間もなく雨が上がったので、露天風呂に入りに行った。随分遅い時間にも拘わらず、相変わらず混雑している。女性は水着を着ている人もいる。場所によって熱かったり温かったりする。見上げる空の星が素晴らしい。風呂から上がって、少し上流の方へ行くと全く明かりがないので星が一層良く見える。天の川が素晴らしい。
   川中のわき出る湯にて尻を焼き仰ぎ見すれば満天の星

 朝風呂に入り、朝食を食べてゆっくりチェックアウトした。見送りに出てきてくれた小泉さんがこの辺りのことについて説明してくれた。近くに野反湖があるが、今まで知らなかった湖で、物の本を見ても余り説明がない。どうせたいしたことはないだろうが、折角だから行ってみることにした。行ってみて良かった。自然がほぼ完全に残されていて、余計な人工の物は一切ない。日本ではこういう場所が殆どなくなってしまった。自然を大切にしている六合村に敬意を表しつつ、来た道を戻って、途中から草津方面に向かって国道292号線に入る。
草津温泉を過ぎて暫く行くと、白根火山である。活火山特有の山肌から所々ガスが吹き出している。車を停めて「湯釜」を見に行った。乳白色の釜に蛍石色の水が溜まっている。
 浅間白根火山ルートを通って鬼押し出しまで走った。鬼押し出しは大変な人出である。溶岩原をゆっくり散策した。大猷院(家光)と厳有院(家綱)の石灯篭がたくさんある。中軽井沢周辺で夕食を食べようと思ったが、上信越道に向かう道路が大渋滞だったので、とにかく早く高速道路にたどり着こうということにした。随分時間がかかったが、やっと上信越道に乗れた。横川のサービスエリアで夕食を食べようと思ったが、食堂は大変に混んでいる。仕方がないから弁当を買って車の中で食べた。