アジャンクールの拍車

 「アジャンクールの拍車」伝説は、1415年10月25日にヘンリー5世がイギリス軍を率いてフランス軍を破ったアジャンクールの戦いで、ある騎士の馬の緩んでいた拍車が落ちた、と言われたときから始まった。拍車は伸びた木の根に取り巻かれ、見つけられやすく持ち上げられて土産物探しの人に発見されるまで何世紀もの間そこに横たわっていた。当然の成り行きで拍車は本物として受け入れられ、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館の武器収蔵品に加えられた。
 しかし、1960年には拍車の真贋を疑うものが出始めていた。そして、それは1962年に個人のコレクションのオークションに別のイギリスの戦場から見つかったという同じような木に取り込まれた拍車が出品されたことで、アジャンンクールの拍車に対する疑惑は高まった。
 樹木学者が拍車を包んでいた木材を調べたところ、それはドーヴァー海峡近くの戦場には生息していないトウヒ材にほぼ間違いないとはんていあれた。つまり、偽物だったのだ。科学的には模造者がトウヒの木の根を水につけてふやかし、縮んだときに拍車の周りを固く取り巻くようにしたと判断された。

 このような粉飾された拍車は他にもあり、それらは1920年代に武器骨董商が収集家や博物館に売り付けられたものだと結論づけられている。当時、拍車は珍しいものではなく高値がつくことはほとんどなかったので骨董商は商品の価値を吊り上げるために巧妙な手口を用いたのであった。

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アトランティスの探索

 ギリシャ神話の産物であるアトランティスは大西洋のどこかにあったと言われる大きな島である。プラトンによれば、それは地震で破壊され、海に飲み込まれてしまったユートピアであったという。現代のアトランティス信者の多くはその神秘の島大陸は南米とエーゲ海の間のどこかにあったと考えているが、アジアや太平洋にあった、と考えているものも存在する(ムーと勘違いしている?)。19世紀になる頃にはアトランティス熱が高まり、人々はアトランティスを求めて地下や海底を探索するものも現れた。ドイツの実業家クルップ家は彼らの鉄鋼業の財産のうち、50万ドルをブラジルのアトランティス探索の遠征につぎ込んでいる。
 1925年には英国陸軍の退役将校パーシー・H・フォーセットとその息子を含む一行がアトランティスを探すためにブラジルの奥地に旅立った。

 1911年にハインリヒ・シュリーマンの孫であるポール・シュリーマン博士が驚くべき「発見」を持ち出した。その年彼は『全ての文明の源アトランティスをどうやってみつけたのか』という文章をニューヨーク・アメリカン誌に売った。彼は、祖父からアトランティスの秘密を遺されていたと主張した。秘密とは古い封筒一杯の書類と、とても古いふくろうの頭を象った壷だったと言われている。さらに、もう一つ証拠となる「アトランティスのクロノス王より」と刻まれた壷もあった、と主張していた。残念ながらこれらは公開されたことがなかった。

 アトランティス探索者によるもっともしらじらしい嘘の主張をしたのは長い間謎に関心をもっていた神秘主義者マキシン・アッシャー女史であった。彼女は1973年にペパーディン大学の後援を受け、さらに探索に参加したもの一人につき2000ドルから2800ドルの費用を払い単位を与えることに同意させてスペインで失われた大陸を探す度をしている。そして、1973年7月18日、アッシャーは「世界史上最大の発見」を宣言した。報道発表で彼女は3人のダイバーがカディスの沖合約22キロに街路と柱を持ったすくなくとも6000年前の水没した年を発見した、と断言した。
 スペイン政府はただちにアッシャーの主張に対する調査をはじめ、話は「でっちあげ」であると発表した。探索に参加したある学生は「大潜水が行なわれたはずの2日も前に報道発表を見た」と証言した。この後、アッシャーは行方をくらました。記者たちが彼女をアイルランドで捜し出したとき、アッシャーはエメラルド島の近くで次のアトランティス探索を率いていたらしい。

 一つの大陸全部が一夜にして消え去ることは不可能で大陸が消滅するには何万年もかかるだろうと地質学者が長年に渡って論じているにも関わらずアトランティス信者と“ペテン師”はあとを絶たないし、海底が隅々までくまなく探索され尽くすまで、アトランティスの存在を信じたいものは信じ続けるのだろう。

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編み機商法

 いわゆる在宅労働詐欺のうちでも編み機商法は被害者から巻き上げる金額が他の同じような詐欺よりも大きいという点で最も悪質なものの一つである。ある編み機会社は、10の違った名前を使って編み機を売っていたことが知られている。
 ほとんどの編み機はドイツで製造され50ドル以下で輸入され、それをアメリカでの年配の未亡人やその他の理由で外で働けない人たちに500ドル以上プラス金利で転売されていた。
 購入者は編み機の高額の購入費用は編み上がった製品を会社に買い取って貰って得る利益に比べれば何でもないものだ、と伝えられる。場合によっては買い手にサンプ.ルとして幾つかの違った製品を作らせる。そして、それらを全て認め、会社は一つ10ドルで買い取る。実際にはその金は編み機のローンの最初の支払いから出ているのだ。
 セールスマンがいうことによれば、編み機の支払いが終了次第仕事が殺到するはずだったが、仕事の以来はほとんどなく、またあったとしても出来上がった製品は会社に認めて貰えず買い取って貰えなかった。

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安全ミルク詐欺

 近年、関節炎などの疾病の治療のために自然回帰療法が強調されるようになった。効果のない品々の中には蜂蜜、酢、タラの肝油、廃糖蜜、アルファルファ、オレンジジュースなどがある。これらのなかで大復活を遂げたのが「安全ミルク」である。いわゆる安全ミルクを普通のミルクの3〜4倍で売る業者によればこのミルクは「連鎖球菌とブドウ球菌のワクチンを投与された牛の作る抗体のおかげで免疫ができる」ので関節炎を治療したり、痛みをやわらでたりできるらしい。しかし、実際には何の効果もないことが実験でしめされている。

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