いいなりになる間欠泉

 イエローストーン公園には公園内の間欠泉の噴出は地下の人工的な蒸気システムによって活性化されており、イエローストーン公園の入場者を増やすために使われているという伝説がある。公園の職員が「間欠泉は人工的なものではなく、自然の驚異なのだ」といくら言っても納得しない人がいるのだ。そして、職員は、自分達がこの大掛かりな詐欺に関わっている、と信じている観光客がいなくなるだろうという望みを捨てている。

 この奇怪な説がどうして生まれたのかは定かではない。一説によると1920年代に夏の間のアルバイトとして来ていた学生たちが始めたという。
 学生たちは、観光客を有名な間欠泉の前に案内しては自然の驚異について講釈する職員を嫌うようになっていた。そこで彼らは観光客に、職員が壮大な詐欺を働いていると思わせるようなイタズラをして講釈を妨害しようと決めた。

 彼らは廃車からハンドルとシャフトを取り外すと職員からは見えないが観光客からは見える斜面に待機し、時計のような正確さで吹き出す間欠泉に狙いを定めた。そして、その間欠泉が蒸気を吹き出す前にだす「ゴロゴロ」という音が聞こえたとき、一人が「行け!」と叫び、もう一人がハンドルを一所懸命廻すしぐさを始めた。
 その間欠泉は50メートル近く蒸気を吹き上げたが、観光客は誰一人感動しなかったという。

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石のスープ

 16世紀から17世紀にかけてのイギリスの乞食のお気に入りの策略は豪邸に近づき、スープにありつくことだった。大抵の豪邸の主人は、そのような厚かましい頼みは断るようにと使用人に言いつけてあった。にもかかわらず乞食はスープにありつくことができた。

 乞食は応対に出た使用人に「なにもない」と言われると

  「では、この石でスープをつくりますのでお湯を沸かさせて貰えませんか」

と何の変哲もない石を取り出して使用人に頼む。使用人はただの石で作るスープ、というものに興味をそそられ、すぐに鍋と水とスプーンを与える。乞食は鍋の中に石をポンと入れると

  「塩と胡椒をほんの少し、いただけませんか」

と頼む。この願いも断られることはほとんどなく、塩と胡椒を入れたお湯を味見した後、

  「味をもう少し良くするために野菜と肉のかけらをいただけませんか」

と頼み、その後も同じような頼み方でソースなどスープを作るのに必要なものを手にいれ、「石のスープ」を完成させるのだ。

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1ドルストア

 西武への大移住の時期、幌馬車に乗った開拓者たちはインディアンに襲われることよりも、詐欺師に身ぐるみ剥される危険に直面することの方が多かった。当時の詐欺師の中で忘れてはならないのベン・マークスで、彼の創始した詐欺計略はその後の百年間、他の詐欺師たちの生計の支えとなっていた。
 マークスは1857年にアメリカで最初の「1ドルストア」をワイオミング州に開いた。全て1ドルで買えるたくさんの品物が置かれたこの店は開拓者たちにとっては誘惑に満ちたものだった。だが、マークスはまともな商売のために店を開いたのではなく、開拓者たちからいかさまゲームで金を巻き上げるために開いたのだった。

 たとえば、斧の柄を取り替えようとマークスの店にやって来た開拓者はたいていそこで賭けゲームをやって負けてしまう。しかし、そばには勝ち続けている客もいるため、ゲームをやめることをせず、結局有り金をすってしまうのだった。当然勝ち続けている客は「サクラ」の客である。マークスは有り金をすった客を手ぶらで帰さずにただで、斧の柄を与え、その後の幸運を祈って客を帰すのだった。

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