読  書  日  記  '02


『鬼六の将棋十八番勝負―昭和・平成の強者たちに王手』  団 鬼六:ケイエスエス :1500円new
『羽生善治 進化し続ける頭脳』  田中 寅彦:小学館文庫:476円 new
『「たんぽぽの国」の中の日本』  フローラン・ダバティー:伝社:1600円
『もとちゃんの痛い話』  新井素子:角川文庫:520円
『世界の名画』  横田敏勝:南江堂:5000円
『人の魂は皮膚にあるのか』  小野友道:主婦の友社:1900円
『突破ものの母』  宮崎進/え・西原理恵子:徳間文庫:476円
『恐竜の飼いかた教えます』  ロバート・マッシュ著 別役実 訳:平凡社:1800円
『女流棋士』  高橋和:講談社:1500円
『聖の青春』  大崎善生:講談社文庫:648円
『世界青春放浪記』  ピーター・フランクル:集英社文庫:571円
『英語の世界・米語の世界』  ヴァネッサ・ハーディ 加藤恭子=編訳:講談社現代新書:650円
『ブラックジャックになりたくて』  岩平佳子:NHK出版:660円
『水俣病』  原田正純:岩波新書:700円
『家畜外科学』  黒澤亮助:養賢堂:500円
『植物はなぜ5000年も生きるのか』  鈴木英治:講談社ブルーバックス:880円
『イルカはなぜ人の心を癒すのか』  オリビア・ベルジュラック:扶桑社:1905円 >
『図説 奇形全書』  マルタン・モネスティエ:原書房:3400円
『マネー・ハッキング』  幸田真音:講談社文庫:667円
『関節はふしぎ』  高橋長雄:講談社ブルーバックス:880円
『昭和平成家庭史年表』  下川耿史:河出書房:4900円
『長谷川町子 思い出記念館』  長谷川町子全集 別巻:朝日新聞社:1500円
『ダンステクニックとケガ』  ジャスティン・ハウス+シャーリー・ハンコック:大修館書店:2500円
『アラベスク』T上・下、U上・下  山岸凉子:白泉社文庫:各581円
『舞姫テレプシコーラ』@、A  山岸凉子:メディアファクトリー:590円
『薫の秘話』  松田洋子:河出書房新社:1500円
『鳥頭紀行 くりくり編』  西原理恵子:角川書店:1100円
『太陽さん』  いさやまもとこ:竹書房:880円
『文鳥様と私』@、A  今 市子:あおば出版:各650円

『鬼六の将棋十八番勝負―昭和・平成の強者たちに王手』  団 鬼六:ケイエスエス
将棋が大好きな鬼六さんが名だたる棋士達をハンディをつけて対局しながら対談した時の様子などを 綴っている。将棋についての達者な話以外にもさすがに本職、場の雰囲気や表情、立ち居振る舞い、話の 内容やそのときの様子、そこから感じ取れる様々なことを実に鮮やかに、生々しく面白く書いていて 面白い。女流棋士の描写の上品なあでやかさも他に類を見ないのでは・・
『羽生善治 進化し続ける頭脳』  田中 寅彦:伝社
あまたいる天才の中で羽生善治の特異性はなんなのか、その際立ったバランスのよさはどこから来て どういうものを導くのか、と棋士田中寅彦(昔羽生さんと公文式のCM に出ていた人)がいろんな方面から 考察していて、読みやすい上にとっても面白い。棋譜が読めない私は将棋の流れを追ったところは どんどん飛ばしてしまうので申し訳ないが、それでも非常に興味深い。自分が将棋にまったく向いていない ので、将棋が出来るというのはどういうことなのか、脳みその作りや能力にどんな違いがあって、 それをどういう風に機能させているのかは、昔からとっても知りたい事のひとつ。
『「たんぽぽの国」の中の日本』  フローラン・ダバティー:伝社
サッカーのトルシエ監督の通訳として結構何かと目立っていた著者。ユーモアあり、知性あり、日本とい う国を率直に愛情深く眺めた視点の数々もとても面白い。世の中には色んな人がいるんだなぁと思う。
『もとちゃんの痛い話』  新井素子:角川文庫
人気SF作家である作者がとある病(?)で病院にかかる羽目になった顛末を楽しく綴った本ですっごく 面白い。一般的に読んでも非常に楽しいし、医学生が読んでもまた違う視点で非常〜に興味深いケース が満載!あまり解説するとネタばらしになってしまうので言えません。
『世界の名画』  横田敏勝:南江堂
特に理由が無くても画集を眺めるのは楽しい。特に値が張る上にかさばるこの手の本は図書館が 大変ありがたい。よく知っている有名な絵であっても、見るたびに何かしら違うものがあったり、 解説者の視点やの切り口が違うので飽きることがない。
『人の魂は皮膚にあるのか』  小野友道:主婦の友社
皮膚科医が様々な皮膚の疾患や奇形、人とのかかわりの文化などについて綴った本で面白かった 記憶はあるもののあまり印象が残っていない。もうちょっと寝かしてもう一度読んでみたい。
『突破ものの母』  宮崎進/え・西原理恵子:徳間文庫
グリコ班に限りなく近いキツネ目の男として有名になったやくざ&活動家(という肩書きでいいんだろうか・・) が自分の幼少期からの半生と小柄で物静かだが限りなく強い姐さんである自分の母について綴ったもの。
『恐竜の飼いかた教えます』  ロバート・マッシュ著 別役実 訳:平凡社
恐竜のついての本は多いが、これは恐竜の大きさや性質、食べ物などの情報がものすごく多い上に、それを あくまでペットハウツー本として知らん顔をして仕上げているのが楽しい。つまり、どの恐竜も実際地上に いて、読者はそれを飼うためにこの本を読んでいる、というようなスタイルで押し通しているのだ。精密で とぼけた絵も素敵。初心者向きにはこれこれ、この種は子供ともうまくやっていける、面倒がりやのあなた には、これはアパート向きではない、といった具合。ちょっと澄ました皮肉の利かせ方はイギリス流? (作者はオックスフォードで動物学を学んでいる)
『女流棋士』  高橋和:講談社
将棋界のアイドルとしてテレビにもよく登場する高橋和(やまと)の自叙伝。将棋についての話よりもむしろ 交通事故で足を切断する寸前にまでなった大怪我をおった幼少期の家族、特に母親についてのストーリーが 中心になっている。個人的にはそのかなりややこしい治療に関するところも大変興味深かったが、下の村山 聖のケースとも似て、重い病(もしくは怪我)を負った子供の親が持つ強い罪悪感のような感情が非常に 印象的だった。闘病する、ということはただ時間と手間をかけて体を元に戻すだけの作業では ない、とても複雑な問題なんだなぁと思った。

彼女は若くとても可愛い顔をしているので、まあ勿論それで得をすることもあるだろうが、辟易する ことも相当多いと思う。当人が結構さばさばした性格なので救われるが随所にその心労がにじんでいる。

『聖の青春』  大崎善生:講談社文庫
名人のタイトルに手が届くかと言われたところで早世した棋士、村山聖の伝記を彼をよく知り、棋士として ではなく、編集者として共に将棋と共に過ごしてきた作者が記したもの。小さな頃に発病したネフローゼと いう重い病を引きずり引きずり、思い切り走ることも、食べる事も、学校へ行くこともままならなかった 少年がただ一つ将棋だけにかけて、東の羽生、西の村山といわれるまでに駆け上ってくる。将棋に関わる 息詰まるすさまじい競争の世界や周りの棋士達のドラマも非常に面白いが、長い長い闘病の苦しさ、病院や 診療所の色々、家族の心痛、本人のささやかな夢や絶望といった面も大変こまやかに描かれている。 また何といっても親以上の存在といった森師匠が味わい深い。作者と一緒の時、偶然公園でとぼとぼと具合 悪そうに歩いている弟子と会ったときの森氏の様子を「人間というよりは犬の親子のような」、「純粋で 無垢な愛情そのもののような」姿を見ているようで息をのんだ、と描いているくだりは感動的だった。

ちょうどその頃私は大学で繰り返し腎臓の病気を習ったり、ネフローゼの腎臓の標本を眺めたりしていたが、 私をはじめ学生達は腎臓がどうなるか、検査値はどうなるか、予後(どのぐらい生きられるか)はあんまり よくないとかそんなことはいっぱい覚えて知っていたけど、ここにあるような患者の苦痛の激しさや負担の 大きさなんてほぼ知らなかったといってよく、まして将来の夢まで砕かれる苦悩や、家族の苦しみの大きさ まではとてもこんな風に想像することはできなかった。そういう意味でも本を読んで驚くことがたくさん あった。

『世界青春放浪記』  ピーター・フランクル:集英社文庫
日本でもテレビなどでおなじみの数学者であり、大道芸人であり、世界中の言語を操る著者の半生を綴った もの。自分自身や家族、友人達の話や世界の様々な国、人、文化を素直で明晰な視点で面白がりつつ眺めて いて、しかも大変読みやすい。
『英語の世界・米語の世界』  ヴァネッサ・ハーディ 加藤恭子=編訳
英語と言ってもちょっとつっこむと古い起源の香りを残す語彙や、新しくてシンプルな言い回しなど様々な 民族と歴史が煮詰まっているのがわかるがそれを正に分化歴史のお話を織り交ぜながらたどり、解説した本。 とても面白い。
『ブラックジャックになりたくて』  岩平佳子:NHK出版
生協につんであったので読んでみた。私自身あまりよく知らなかった、そして一般にも何をしているのか あまり知られていない「形成外科」医師による日常診療記のような内容で、乳房再建、ケガややけど、傷跡、 糖尿病や寝たきりによる床ずれの修復(筋肉や皮膚の移植)、表面に現れる癌の切除、あざや染み、刺青を 消す治療、点滴の抗がん剤がもれるとどんなに大変なことになるかや、それを修復するのに必要な形成外科 のテクニック、様々な奇形の形成、顔面の損傷の形成、美容整形ととてもいずれも興味深く、面白かった。
『水俣病』  原田正純:岩波新書
作者の原田先生の講義があったので改めて手に取った。早くも風化してしまった公害の悲惨さ、新しい説を 認めさせる大変さ、行政や産業界の圧力の強烈さ、医師達の色々な面。それに加えて当時の日本、熊本の生活 の様子が生々しく伝わってくる。
『家畜外科学』  黒澤亮助:養賢堂
近所の図書館でリサイクル図書としてもらってきたすごく古い本。獣医さんの教科書で人間以外の医学の本 を見るのは初めてなので大変面白い。人間と同じ名前の同じような骨がちょっとずつ違う形で、同じように 働いているのを見ると、動物って繋がっているんだなぁと思う。獣医独特の技や器具なども珍しい。 持ち主の名前も書いてあったが、もうこの方もとっくにベテランか、ひょっとしたら引退後かもしれない。 学生の持ち物らしく、前半に鉛筆と万年質でものすごくいろいろ書き込みがしてあり、それが徐々に 減っていって後半は真っ白なところがほほえましい。
『植物はなぜ5000年も生きるのか』  鈴木英治:講談社ブルーバックス
死ぬのが怖いと思い始めた子供に「どうして虫はすぐ死ぬの?死ぬのやだ(;_;)どうして木は千年死なないの?」 と問われて、私自身も「なんでかね〜?」環境の他、代謝(運動したり、熱を発生したり)が違うと寿命が変る、 と言うのはある程度分かるのだが、植物との違いはあまりに桁が違いすぎる。それに人間にスポット当てて どんどん医学を学んでいくと、各項目ごとに一々じゃあ動物はどうなの?虫は?植物は?とどんどん 気になってくるのだ。

植物学者の作者はこういう素朴な疑問をしっかり捕らえ、順を追って分かりやすく説明をしてくれて、 ページを繰るたびに目からうろこだった。まだまだ解明されていないことも多いとはいえ、植物と動物の 違いだけでも、知ってるようで知らないことがいっぱい。毎度のことであるが生物と進化論って本当に 面白い。

『イルカはなぜ人の心を癒すのか』  オリビア・ベルジュラック:扶桑社

"イルカと泳ぐと、普通は出ない脳波(シータ波)が出現する。これはどういうメカニズムで、どんな意味が あるのだろう"というテレビ番組を見て非常に興味を持ったので読んでみた。 イルカと泳ぐドルフィン・セラピーは心身の疲れを癒すだけでなく、様々な疾患に良い影響を与えたり 自閉症やダウン症ど脳の発達に問題のある子供達に非常にはっきりとした効果を及ぼす事が知られてきて 最近はいろいろ研究が進んでいるらしい面白い分野だ。

本書はイルカと泳ぎ、その研究もする「ドルフィン・ソサエティー」を作ったフランス人女性の自伝的な本。 イルカとの出会いや、様々な発見、作者のパワーに満ち溢れた半生や、ドルフィンソサエティーを ビジネスとして育てていく波乱に富んだ行程などはとても面白い。が、西洋風に理想化された 東洋哲学・瞑想信仰や、感情的かつ我田引水な自然保護思想が延々と述べられている後半はかなりうんざりする。

『図説 奇形全書』  マルタン・モネスティエ:原書房

古今東西の奇形と言われる人達が、いかに社会の中に存在していたかを膨大な写真を含む資料で記した本。 この本を書く自分の動機は、そしてそれを手にとる読者の動機はなんだろうか、と言う序文から始まる。 ケースの多さとバリエーションだけでも十分に読み応えがあるが(エレファント・マンとして有名になった ジョン・メリックの記載もある)、医学的な資料としてはそんなに突っ込んではいない。この作者は 医学者ではなく、ジャーナリストである。そして、異端の者達(とその親)がどのように解釈され、 扱われ、生活してきたか、文化、社会はどう対応してきたかと言うところが重点的に 描かれ、これはどんな詳細な医学書でも得ることの出来ない深い情報をたくさんはらんでいる。

『マネー・ハッキング』  幸田真音:講談社文庫

珍しく現代小説を読んだ。ベテラン銀行員である40代の女性主人公って言うのも珍しいと思ったら 作者も女性。しかし内容はものすごくハードな面白さで、一気に読んでしまった。複雑な金融の世界に ハッキングで挑む主人公と不思議な縁でつながった男達。全然知らないややこしい世界だったのにすいすい 読めてしまうとこがすごい。目のくらむような情報合戦の所々に描かれるこまやかな心理描写もいい感じ。

『昭和平成家庭史年表』  下川耿史:河出書房

サザエさんとオーバーラップする時代を調べるために精読。歴史上の大きな出来事のみならず、家庭製品や 庶民の文化、暮らしにかかわるすごい量の情報が満載で時代の匂いを感じるには大変いい資料だった。 (それにしても河出書房ってやたら手間のかかる、面白い本をいっぱい出してますね。)

『長谷川町子 思い出記念館』  長谷川町子全集 別巻:朝日新聞社

サザエさんで歴史を追う、という試みをしていたので、作品の外の当時の時代や作者の人となりを 更に詳しく知りたくて読んだ。この人の半生を描いたNHKの朝ドラマも見ていたし、絵日記風エッセイ も大抵見ていたので知っている話は多かったが、それでも戦争をはさんだ大きな歴史の転換期に、あきれる ほど真摯に、そしてマイペースに漫画に取り組んできた作者と、その家族、様々な縁でつながった そうそうたるメンバーとのエピソードはとても面白かった。

『関節はふしぎ』  高橋長雄:講談社ブルーバックス

工作や縫い物などが好きでいろいろ作っていると、「長年酷使しても壊れなくて、滑らかに、かつ複雑に 動く可動部」なんて物を作るのがいかに大変か身に染みる。解剖実習を終え、ますます関節に対する敬意が 増し、休み中も解剖室で手だの膝関節だのをつつきまわしていた私である。

肉と骨だけでなく、腱、粘液、軟骨、脂肪、丈夫な膜で恐ろしいほどうまく作られた生きた可動部。 しかも各関節ごとに違うその動きの巧妙なことと言ったらどんなハイテク機器も真っ青。知れば知るほど 奥の深い世界。またその構造の秘密を追っていくと、生命の長い歴史、進化の面白さ にもいっぱい触れられる。

『ダンステクニックとケガ』  ジャスティン・ハウス+シャーリー・ハンコック:大修館書店

バレエものを続けて読んだので必然的に吸い寄せられた。写真が多く、ダンサーのために本当にこういう 本が必要だと言う情熱を持って作られた本で非常に詳しく、面白い。と同時に、プロというものがいかに過酷 なものであるかがひしひしと伝わってきて痛々しい気もしてしまう。多少なりとも解剖の勉強をしたので、 どの動きでどの筋肉と骨がどう使われると言った話が何倍にも面白いのが嬉しい。

『アラベスク』T上・下、U上・下  山岸凉子:白泉社文庫

↓の作品の原型ともなった同じ作者の若かりし頃の有名な作品で、ソビエトを舞台にしたバレエの長編。 このあとバレエ漫画のブームの根っことなり、数え切れないパクリを生んだ。花とフリルいっぱいの少女 漫画の最盛期の頃の絵や表現が懐かしいが、そんなことよりもストーリーの重層的なこと、あの時代の 鉄のカーテンの向こうをよくもここまで調べたなぁという驚き、1回完結した第一部から更に膨らむ第二部 の見事なことで何度読んでも面白かった。最後の方のラ・シルフィードのシーンの美しさが忘れがたい。

子供の頃、断片的に読んだことがあるだけで殆ど知らなかったのだが、それでもロシアのバレエ学校の 「解剖学」の授業のシーンで「足を横に上げた場合90度から135度まで上げることができるのはなぜか」と言う 問いに生徒の少女が「大腿骨頸(トロカンテール)がひっこんで関節窩(アケタブルウム)とぶつからない から」と答えているシーンがものすごく印象的で、専門家はそういうこと勉強するんだなあとか、体が動く ときはすごく色んなことがおこるんだなぁとか、解剖学やスポーツ医学に目覚めた覚えがある。

『舞姫テレプシコーラ』@、A  山岸凉子:メディアファクトリー

現在連載中のバレエ漫画。登場人物一人一人のドラマも面白いし魅力的だが、ふんだんに盛り込まれた バレエの理論がまたすっごく面白い。月刊誌連載なので、毎月毎月待ち遠しくて本当にやきもきしてしまう。 主人公姉妹の過酷ながらも光のいっぱい当たった明るいかわいらしさと対比して、社会の底辺でもがく 脇役の少女の抱える闇はあまりに重くてちょっと子供には見せられない内容になっている。 今ひたすら心配なのは、作者の体力が尽きて尻切れトンボにならないかってことと、新しく施行される きわどい表現を制限する法律に引っかからないかってこと。

『薫の秘話』  松田洋子:河出書房新社:1500円

これ以上さえない主人公はちょっといない、という中年男「薫」を取り巻くみみっちい日常。なのだが この一こま一こまの表現の濃さはちょっと類を見ない。何一つ出来ないのに屁理屈だけは超一流の薫が 延々とはくセリフの内容もボリュームも歪んだ調子のよさも、ストーリーとは直接関係ないけどぎっしり 書き込まれた落書き状の書き込みの多さも何もかもが異色。作者が女性ってのがまた驚き。つぼにはまる人 にはうなるしかない面白さ。なんだけど・・これが好きって女性は初めてだと言われたことがあるので、 イマイチ人に勧めるのはためらってしまう逸品。連載で読んでいたのだが、大判の単行本が出たので 買ってしまった・・

『鳥頭紀行 くりくり編』  西原理恵子:角川書店

西原理恵子の紀行漫画シリーズ。タイで出家した様子、ドイツでのはねむーん紀行など、好きな人(私を 含む)にはとっても楽しい。でもかなり絵が、かわいらしい以前の絵から遠くなってるとこもあるので いやな人にはいやかもしれない。。でも好き。

『太陽さん』  いさやまもとこ:竹書房

ほのぼの系(しかしエロも平気で入る)のかわいい絵柄の漫画を描く人として知っていた作者が、珍しく 介護の話?と思ったら作者の父が倒れ、要介護状態に陥ったいきさつのお話、の実録漫画。退院しな ければならないシステム、どこでどうすればいいか分からない福祉システム、手に入れにくく錯綜する 情報、やったものにしか分からない様々な状況と心情・・が綴られている。ものすごい情報量だし、 重い話なのだが、シビアなところを真っ向から描いていながらうっとうしくなく、絵も表現も とってもかわいくけろっとしていて、あくまで読みやすく、明るいとこがすごい。これはもっと世間で 読まれていいと思った。

『文鳥様と私』@、A  今 市子:あおば出版

漫画家である作者が部屋の中で飼い出した文鳥たちとの日々をつづったコミック。。子供の頃、手乗り文鳥 を飼っていたので結構文鳥には思い入れがあったのと、表紙の文鳥の絵が素晴らしくリアルに素敵だった ので、つい買ってみたのだが、とっても面白かった。手乗りとはいえ日中放し飼いで、しかも複数の人 ならぬ"鳥"関係の元で買うとこんなに面白い野性の性格がたくさん出てくるのだというのも発見だった。 (私はこの作者のことも、その作品も全く知らなかったのだが、結構人気のある人らしい。)


読書日記 目次 
HOME