++トレジャー・イン・スノー (2) ++



挿し絵(102K)








どのくらい歩いたのだろうか。
すでに、耳や手の感覚がなくなりかけていた。実際、何度か懐中電灯を
落としそうになっていた。
無謀だとは、分かっていた。
シアンを見つけられる可能性など、皆無に近かった。
人間が、こんな中で生き延びてられる時間など、たかがしれている。
もって、二時間といったところだろう。すでに、一時間半は経っている。
シアンが、生きているかどうかもわからない。
だが、八満は、絶対に生きている、絶対に見つかると、信じていた。
(見つけなくちゃならない。ポン太のためにも、俺のためにも・・・)
ふと、懐中電灯の光の中に、赤いものがあったような気がした。
八満は、その見えた場所に光を当てて、手袋の上から目をこすった。
また見えた。
もう間違いない。
八満は、思いどうりに動かない体を、なんとか走らせた。
さっきの場所まで来るとそこには、赤い、いや、真紅の髪が雪の中から出ていた。
(シアン・・・!!)
八満は、雪を掘った。
やはり、シアンだった。すぐ横にシアンのバッグもある。
八満は、シアンの顔に耳を近づけた。
息をしている!
(やった!!)
八満は、バッグを肩に掛け、シアンを横抱きにかかえた。思ったより、軽かった。
少し歩くと、ちょうどいい洞穴があった。
八満は再び走り出した。
すぐに、洞穴に着く。
洞穴は、高さ、幅2メートル、奥行き10メートルといったところだった。
吹雪をしのぐにはちょうどいい。
八満は、一番奥まで行くと、シアンを下ろし、バッグからスキーウェアを
取り出して、シアンに着させた。



何時間たっただろうか。少し眠っていたかもしれないが、とにかくシアンは、
目を覚ました。
「シアン・・・?」
八満は、優しく呼びかけた。
「ん・・・あれ?八満?ここ、どこ?相田さん達は?」
「ここは、たまたま見つけた洞穴。で、相田達はかまくらの中にいる。ポン太もな」
「そう、良かった・・・ねえ、わたし雪に飲まれたのよね?」
「ああ」
「八満が、助けてくれたの?」
「まあな」
「・・・ありがと」
シアンは照れくさそうに言った。そして、八満に気付かれないように、そっと、
八満に寄り添った。八満は、完璧に気付いていたが。
「・・・ねえ、八満。かまくらって何?」
八満は、少し赤面して、
「そ、そうだな、何ていうか・・・雪で作った小屋みたいなもんだ」
と、八満は、シアンがあくびを噛み締めているのに気付いた。
無理もない、もう次の日になっているだろうから。
「あ、眠いんなら、寝てもいいぞ?」
シアンは、首を横に振り、
「ううん、それで?どうやって作るの?」
「えっと、確か、最初は雪山みたいなの作るんだ。それで・・・」
八満は、かまくらの作り方を説明した。
シアンは、面白そうに聞いていた。
(こうやって、シアンと二人きりになるのも、初めてだな)
八満は、そう思っていた。
(こうやって、八満と二人きりになるのって、初めてよね)
シアンは、そう思っていた。
外は吹雪。こんな薄暗い洞穴の中で、二人きり。しかも、話すネタも
尽きてしまった。
(まずいな・・・いざとなったら、話す事なんてないじゃん)
八満達は、お互いに目が合う度に、目をそらしていた。
そんな事をしている内に、数時間が経過した。
このままでは、まずい。八満はそう思い、
「・・・悪かったな。こんな事になって」
シアンは、珍しく謝っている八満を見て、
「こんな事って?」
「いや、だから・・・こんなとこで、こうやってるって事だけど」
「別に、あんたのせいじゃないじゃない」
「でも、俺が清丸の誘いなんかに乗ったから・・・」
「そんな事ないわよ。わたし、ここに来て雪を見れて嬉しかったもん」
「死にそうな目にあってか?」
「それは別として、よ」
「まあ、それならいいけどよ」
シアンは別に、来なかった方が良かったとは思っていなかった。それだけで、
八満にとっては、大分気が楽になった。
そして、再び気付く。
(何で俺達、こんなに近くにいるんだ?)
シアンの顔との距離は、だいたい10センチ弱。少なくとも、森の中の
時よりは近くなっている。
(なんで私たち、こんなに近くにいるのよ?)
シアンが、八満に寄り添ったせいだったが、八満も、シアンもその事を忘れていた。
緊張という名の空気が、八満達のいる空間を支配している。
「お、おい」 「あ、あのさ」
二人の声は、見事に重なった。さらに、二人同時に相手の方を振り向いたので、
二人の額と額がぶつかった。
「痛て!」 「痛た!」
これまた同時に言った。
そして、このせいで二人の顔と顔の距離は、5センチ程までに狭くなっていた。
二人は、じっと見つめ合った。
そして、二人の顔が自然に近づいてきた。
もう少しで、間隔がゼロになる。
その刹那だった。
「なぁにをしているー!!?」
八満は後ろに飛び退いた。
その一瞬後、八満のいた場所を、何か鋭いものが切り裂いた。
「び、びっくりした〜・・・って、バカJr!?」
八満は、刀を構え直したJrに言った。
Jrは再び、八満に切りかかる。
「誰がバカだ!?」
八満は、振り下ろされた刀を白刃取りした。
シアンはシアンで、わけが分からず、ぼーっとしている。
「な、なんでここに・・・?」
「なんでって言われてもねえ」
「なあ」
声は、洞穴の入り口の方から聞こえてきた。
「な!!?」
「え!!?」
八満は白刃取りしたまま、シアンは呆けたまま、朝日の射し込む入り口を見た。
そこには八満達のクラスメートである岡本、三太、ポン太を抱いた千津と
プラスα(α≒30人)が、何やら意味ありげなひそひそ話をして立っていた。
「なんで、お前らがいるんだよ!?」
「なんでって、そりゃあスキーに来たんだよ」
「そんで、今朝早くからスキーしてたってわけ」
「どういうことだ?定員4人と一匹じゃなかったのか?」
「何故か、僕たちが出発した後に招待されたらしい。僕たちとは違うルートから
来て、登るのに一時間もかからなかったらしいぞ」
Jrが刀を鞘に収めながら言った。
「ちょっと待て!雪崩は起きないのか!」
「それなら心配ないってさ。爆弾でも爆発させない限り大丈夫だってよ」
クラスの一人が言った。
じゃあ、昨日のは?
八満がそう聞くより先に、シアンが言った。
「ね、ねえ・・・みんないつからそこにいたの?」
「二人が、頭ぶつけ合ったときから」
クラスの女子が言った。
終わった。全部見られていた。何も言い訳が思いつかない。
「なんで声くらい掛けねーんだよ!?」
「だって、ねえ」
「お楽しみを、邪魔しちゃ悪いと思って」
それを聞くと、二人は真っ赤になり、そして、
『そんな〜』
二人はそろって言うと、絶望感と寝不足のためか、そのまま倒れてしまった。


挿し絵2(117K)










二人が目を覚ましたのは、十数時間後で、Jrと千津を含めたクラスメート達が、
スキーをひとしきり楽しんで、帰り支度を済ませた後だった。


後日談だが、八満が清丸に慰謝料を請求すると、清丸に、
「家の別荘が危なくないって言っただけで、別に森とかが危なくないとは誰も
言ってないよ」
と、言われて、八満は何も言い返せなかったという。








あああ、有難うございますうううううッッッ!!!(狂喜)
こ〜〜〜ゆ〜〜〜の、読みたかったんですよ私……… o(^_^*)o
もう、ツボ直撃で即死状態(幸せな死に方やな私…)ですッ!!!
しょっぱなからもう煩悩しまくりで幸せ幸せvvvvv
これにつり合うカットが私に描けるとも思えませんが(昏倒)
でも楽しみに描いて、あとでアップしたいと思います♪♪♪
…ちなみに、メールでいただいた原稿受け取って、3時間でアップ
(夕食時間含む)。こんなに急いでタグ打ったの初めてです(爆笑)
私の興奮ぶりが判ろうというもの。

……本当に、有難うございました!!!!! (^_^*)/





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