まだ寒かったある日、 酒蔵いけすのマスターの「酒蔵見学に行くかー」の 一言で、カウンターで飲んでいた沓沢さんと私は、狂喜乱舞 して(ただ酔っ払っていただけともいう)マスターについて 浜千鳥を訪ねる事になりました。マスターにとっては今年の 酒を決める大事なお仕事だったのですけれど、そんな事には お構いなく沓沢さんは初めての、私も3回目くらいの酒蔵 見学と遠野旅行へと夢は膨らむばかり…。タンクから醪(もろみ) を好きなだけ飲ませてくれるって本当かしら?
3月21日の早朝、マスターと3人で八王子駅に待ち合わせて いざ出発。東京駅でもう一人、森さんという私の酒飲み友達と 合流して、いざ東北新幹線へ。その前にお土産とキムラヤの アンパンとお弁当を買うを忘れずに。新花巻まで新幹線で 3時間ちょっと、そこから釜石線で海岸の方に走って2時間くらい、 午後1時過ぎにようやく釜石の手前の小佐野に到着したら、 もう専務の新里さんが迎えに来ていてくださいました。
蔵に着くと、早速、蔵の中を案内して頂くことに。入ってすぐに、 大きな釜が半分床に埋まっています。そうか、これで米を蒸すの かぁ…なんて、感心しながら釜の中を覗いたりした後、麹室の 前で酒造りについてパンフを見ながら詳しく説明して頂きました。 しかし、その間も隣りでホースから勢い良く出てくる搾りたての酒が 気になってしょうがない私たち…。後でその搾りたても味見させて もらいました。うーーん、おいしい、本当にフレッシュ!です。
それから、斗瓶が積んである部屋できれいな色の斗瓶にうっとり しながら記念写真。はい、どんなに斗瓶取りの酒が貴重でおいしいか 十分に理解したつもりです。次に、現在発酵中のお酒をタンクの 上から覗かせてもらいました。タンクがたくさん並んでいて、 身長より高いくらいの足場に登ってタンクの中を見せてもらいます。
マスターが「落ちても助けてあげないよ。窒息しちゃうからね。」 なんて言うので余計に緊張してしまいました。蓋が開いているタンクが 4つくらいあって、仕込んだ日や酵母によって、泡のぼこぼこする感じが 全く違いました。どれ、って感じで杜氏の小原さんが我々にタンクから 醪を長い柄杓ですくってくれます。みんなで回しながら、タンクを次から 次へと味見。もうすぐ出来上がりの酒と出来かけの酒、口の中で跳ねる ような感じや香りが違うのです。でもでも、どれもおいしい、こんなの 飲んだ事ないですもの。好きなだけ飲んでいいと言われたのですが、 足場が高いので落ちたらどうしようかとどきどきして、*そんなには* 飲めなかったのがとても残念でした。
タンクを覗き終わったら、利き酒の始まり。この利き酒で今年いけすで 飲めるお酒が決まるかと思うと、ちょっと感動です。検査室の机の上に、 純米、大吟、吟が2種類ずつ、純吟と特吟が1種ずつおかれ、チョークで 何号のタンクであるかが机に33,24なんて風に書かれ、利き酒用の お猪口に酒が用意されています。まずマスターや専務、杜氏さんがお仕事の 利き酒をするのをじっと待ちました。一つ一つ利き酒しながら、これは孝敏、 これは何々、とマスターが決めていきます。一通り終わると次は私たちの 番です。同じ純米でも全然味が違う!タンクによってこうも違うのかと 感心しました。もちろん、私たち3人は利き酒をしながら、吐き出さないで 次々に飲んでしまいます。3人であーだこーだ言いながら、次々に飲み干して いきます。私は今年の孝敏になった酒と、特吟が好みでした。こうしていて 細かな味や香りの違いが伝えられないのがとてももどかしいです。孝敏は、 最近いけすに行ったら必ず飲んでいます。
今年の浜千鳥を十分堪能した後は、お土産用にそれぞれ大吟と純米の浜千鳥 などを買い求め、ちょっと遅いお昼に軽く蕎麦を食べに行きました。その後は 専務に「鉄の資料館」へ案内して頂きました。展示も勉強になりましたが、 3Fからのリアス式海岸の眺めも素晴らしい所でした。 夜は三陸の海の物をたくさん頂きながら、お酒を楽しみました。専務さんと 我々一行の他に、杜氏の小原さんと写真家の浅野さんも酒宴に参加してくだ さり、とても楽しい一夜になりました。お酒は浜千鳥の大吟醸の生と火入れ をした物を1本ずつと、仙人郷2種類計4本を飲み比べました。仙人郷は、 以前鉄鉱石を掘っていた地中深くから汲み上げた水から作った酒だそうです。 水が主張している酒だと思いました。私は浜千鳥の生の大吟が一番好きで したが、杜氏さんは本醸造が一番お好きだとのこと。意外でした。浅野さん からは、いけすさんへときれいな写真を頂きました。 そして夜は長く2次会へと流れていきます。川上の呑んべい横丁の一軒に入り 、そこでもわいわい飲んだ後に、寝る前にラーメンと餃子まで食べに行く 私たちの胃はどうなっているのでしょう?この土地のラーメンは魚でだしを 取っていて、東京で食べるラーメンの味とは一味違っていました。 翌日は民話の里、遠野観光。その前に橋上市場へ行ってお土産を買うのも 忘れませんでした。ここは橋の上が市場になっています。鮮魚、みりん干し などとてもおいしそうでした。さて、とことこと釜石鉄道で遠野に到着すると、 まず「とおの昔話村」、「遠野市立博物館」へ行きました。 (おしらさまの話って、よく考えると怖いですねー。)その後タクシーで 移動して、伝承園で見学&お昼にし、かっぱ淵で記念写真まで撮って ようやく帰途についたのでした。
帰りの新幹線のグリーン車では、「チューボーですよ」の堺正章の家族と 一緒になるなどなかなか面白かったです。八王子でマスターと別れて、 飲み倒し、食い倒しの一泊二日浜千鳥の蔵見学と遠野の旅は無事に終了した のでした。マスターご苦労様でした、酒飲みの引率本当にありがとうございました。
専務の新里さん、杜氏の小原さんをはじめ浜千鳥の蔵の皆さんどうもお世話に なりました。これからも、おいしいお酒をたくさん作ってくださるのを楽しみにしています。 浜千鳥のますますのご発展をお祈りいたします。