パラグアイの妖怪たち

パラグアイの原住民族はグアラニー族です。グアラニー族の神話にはいろいろなモンスターが存在し、昔から信じられてきました。そして今も信じられています。

EL POMBERO
ポンベーロ

EL POMBERO  ポンベーロは、グアラニー神話の中で最も知られた妖怪である。グアラニー語で夜の男という意味で、見た目は人間だが、醜くて背が低い。そのうえ小太りで肌の色は浅黒く、けむくじゃらの分厚い手をしている。夜にさまよい歩き、いたずらをする。
 ポンベーロは、インディオ・グアイクルの魂であり、インディオ・グアラニーの敵であると信じられている。ポンベーロは、人を襲ったり何かを奪ったりと、悪いことをしてふらふらさまよい歩く。
 ポンベーロは森の中や荒れ放題の家にこっそり住んでいる。夜中に起きて、どこにでもさまよい歩く。簡単に化けたり消えたりする能力を持っており、毛むくじゃらの手で触り、悪寒を感じさせたりする。鍵穴を通り抜けたり、狭い空間を滑り抜ける。4本足で走り、鳥の鳴き真似、特に夜行性の鳥の鳴き声をまねしたり、人間の口笛、動物の叫ぶ声、遠吠えのまねもする。
 ポンベーロは女好きである。特に女性が夏の夜に外で寝ていると(昔、パラグアイでは暑い日はよく外で寝ていた。)、毛むくじゃらの手で優しくなでて起こそうとする。時には眠っている間におそって妊娠させてしまい、ポンベーロによく似た子供を産ませてしまうこともある。ポンベーロは眠っている若い娘をさらい、十分堪能したあとに放ってしまう。そして娘は妊娠してしまうと言われている。
 ポンベーロの好感や好意を選るには、彼にプレゼントすればよい。人々はいつも何本かのたばこ、蜂蜜、さとうきびの蜜など、捧げものを家の後ろなどポンベーロの来そうな場所へ、もう悪いことをしないでくれと頼みながら小さなテーブルの上に置いておく。彼の好感を得ると、ポンベーロはその家や動物、荷馬車や牛車など、いろいろなものを守ってくれる。そして、お返しにポンベーロは、感謝のあまり果物や卵など、家の隅に置いておく。

MALA VISIÓN
マラ ビジョン

 マラビジョン(悪の幻)は、とても美しい女性であったと言われている。だが、あまりにも情熱的で正気を失うほどであった。そのため夫に他の女性がいると知った彼女は、夫を殺しその死体を洞窟の中に投げ込んだ後に、火の中に入れて死体を燃やしてしまう。
 しかし7日目の夜、稲妻と激しい火花の中、夫の死体は彼女の前に現れ、彼女は恐怖のあまり死んでしまう。
 その日から、彼女は悲しみに暮れ、簡単の魂が嵐の夜、悲しげに叫びながら山や谷をさまよう。
 もし、夜にこの叫びを聞いて、この叫びのまねをして答えると、瞬く間に透明なベールで包まれた白い背の高い歪んだ顔の女性の幽霊が火の粉とともに現れるという。
 この幽霊は夜だけ現れる。そのためか、時々木につるされた白いベールかきらめく透明な布だけのように見えたり、白いドレスに包まれた美しい女性に見えたりする。
 寂しげな山道で死んでいる人を見つけるたら、それはマラビジョンに遇って、驚きのあまり死んでしまった人に違いない。死に至らなくても口がきけなくなったり、気が狂ってしまう。厄払いのためには聖水を浴び、十字架の絵を持って祈らなければならないとされている。

タウとケラナの子供達

 グアラニーの神タウ(悪の神)とケラナ(眠りの女神)には、7人の未熟児の息子たちがいます。彼らはいろいろな姿をしたモンスターです。

  1. TEJÚ-JAGUÁ
    テジュ-ジャグア

    TEJÚ-JAGUÁ  テジュ-ジャグアは、7つの頭を持った巨大なトカゲで目から火を噴き出す。
     洞窟の中の王様で、果物とその木の守り神である。果物や蜂蜜を食べ、昼ご飯はいつも彼の兄弟でコルディジェラ(パラグアイの中心地方の名前)の洞窟奥深くに住み、夜になると凶暴になり恐ろしいうなり声をあげる、犬のような7つの頭を持った巨大なトカゲのジャシージャテレが持ってくる。草食にもかかわらず、夜道を歩いている人間を捕まえ、あっという間に7つの口で食べてしまう。
     アルトパラナのパラナ川の奥底にも、テジュ-ジャグアが住んでいるという有名な伝説がある。夜行性の巨大な目を持っていて、道を渡っている人間や動物を丸ごと食べてしまうという。
     グアラニーの神様タウとケラナの未熟児モンスターで1番目の子供である。

  2. MBOI-TU'I
    ボイ-トゥイ

    MBOI-TU'I  ボイ-トゥイは、グアラニー語でオウムヘビという意味で、グアラニーの神様タウとケラナの2番目の未熟児の子供である。
     巨大な蛇で、サソリのような大きな毒の尻尾と、オウムのようなくちばしをもっている。彼のテリトリーは大きな泉で、林や草の中をそぞろ歩き、葉っぱの色に混じって目立たない。
     薄暗い曇った日に、耳が聞こえなくなるほど騒がしくオウムが鳴き始める。この妖怪は、ただ野の果物だけを食べるだけで決して姿を見せない。
     ボイ-トゥイは、水の生き物、両生類動物、そして霧、露、花の守り神である。

  3. MOÑAI
    モニャイ

    MOÑAI  モニャイは、タウとケラナの3番目の子供であり、盗難と悪行の守り神である。美しい妖怪で、風のように素早い。巨大な蛇に似ており、喉は大きく頭の上には2本の角があり、巨大な体の上にその頭をすっと立てている。
     深い川の河口や河床に住んでいて、盗みが好きで、アトゥラのカバジュという丘の洞窟に中に盗んだものをため込んでいるという。
     モニャイが動くと水がふるえ、地面が揺れ、動物や人間はひどく怖がった。

  4. YASÝ-YATERÉ
    ジャシ-ジャテレ

    YASÝ-YATERÉ  ジャシ-ジャテレは、グアラニー語で月のかけらという意味です。グアラニーのキューピットで、受胎を授けると言われています。
     グアラニー神話でタウとケラナの4番目の子供とされています。
     ジャシ-ジャテレはシエスタ(昼休み)の妖怪で、いたずらなキューピットである。小さくてきれいな裸の子供で、ウェーブのかかった金髪をしている。魔法の杖を使って、金を運ぶ。そして、森に住んでいる鳥の鳴き声に似た、特徴のあるリズミカルな口笛を吹く。ジャシ-ジャテレは、昼休みの時間、一人でさまよい歩く。特にトウモロコシがおいしい季節に現れる。
     ジャシ-ジャテレは、口笛を吹いたり、ステッキをならして、子供たちをおびき寄せ森に連れて行く。しばらくの間、森に引き留め、野にある蜂蜜や果物を食べさせ、子供と一緒に遊ぶ。最後には家に戻してあげるのだが、子供たちは惚けてしまったり、耳が聞こえなくなったり、口がきけなくなったりしてしまう。しかし、しばらくするとまた元に戻る。ジャシ-ジャテレが愛情を示すために、子供の口にキスをすると、子供の口がきけなくなったりするので、家に帰すと言われている。
     ジャシ-ジャテレは、大きな木の幹の穴のあいたところに住んでいる。
     パラグアイの母親たちは、子供が昼寝する間、ジャシ-ジャテレがいるから外に出ちゃだめよ、森を一人で歩いちゃだめよ、いたずらしたらだめよとおどかした。
     ジャシ-ジャテレが、ステッキをなくすと無力になった。魔法の力が消えるからである。そのステッキを奪う方法としては、ジャシ-ジャテレを酔わせればいいといわれている。彼はお酒が好きらしい。

  5. EL KURUPÍ
    クルピ

    EL KURUPÍ  クルピは、パラグアイの広大な森の中に住んでいるインディオ・グアラニーの古い神話の妖怪である。
     グアラニーの神話によると、クルピはグアラニーの神様タウとケラナの5番目の未熟児の子供であり、とても女好きである。
     クルピは、滅多に姿を見せる事のない野生のインディオある。背が低く、醜く、黒い目をしており、肌は日焼けして真っ黒である。髪は暗闇のように黒く、長くまっすぐである。好色家であり、巨大な巨根を持っており、それを体中に巻きつけている。
     シエスタ(昼休み)か夕暮れの頃に歩き回る。畑の中や森の中を女性が一人で歩いていたり薪拾いをしていると、その女性をつきまとい、リボンのように身につけているその男根で彼女を捕まえる。そして、その女性は気が狂ったり、死んでしまったりしてしまう。
     このサディストから逃れる唯一の方法は、クルピの男根を切り落とすことである。そうすれば、クルピは全ての力を失う。
     クルピは、受胎の守護神として信じられている。また、豊作と日照りのあとの恵みの雨の神とも言われている。クルピが牛のおなかを触ると、双子の子牛が生まれると言われている。また、農家でクルピが休んだり眠ったりすると、そこに置いてあったマンディオカ(タロイモ)や、バタタ(サツマイモ)が異常に大きくなるといわれている。
     森を守るこの神は、必要以上に木を切り倒したり、木を破壊したりすると、人々に罰を与える。人は森にはいると道に迷い、家への帰り道が見つからないまま、永遠に森をさまよい歩かなければならない。
     クルピは、彼を捕まえようとする人間から逃れるために、足を反対につけているとも言われている。

     
  6. AO-AO
    アオ-アオ

    AO-AO  アオアオは、グアラニーの神様タウとケラナの6番目の未熟児の子供で、受胎と生殖の神様である。
     アオアオは南米の真ん中、パラグアイの広大な森の中に住んでいた。人食いであり、よく寝る。
     アオアオは、羊に似た恐ろしいモンスターで、大きく強い爪を持っている。人食い動物であり、森を歩いている人を捕まえて、むさぼり食べる。ピンドという椰子の木に登ると、アオアオから逃れることができるという。しかし、他の木に登るとアオアオは、凶暴な堅いその牙で、木の根を掘り返し、”アオアオ、アオアオ”と叫びながら、木を切り倒してしまう。そして、かわいそうなその犠牲者をむさぼり食べてしまうのである。
     インディオ・グアラニーたちは、アオアオのことを、羊によく似ていたので、オペシャーカアグイ(オペシャは、グアラニー語で羊)とも呼んでいた。そして、群れになってあっという間に人間を食べてしまうアオアオを、とても怖がっていた。

  7. LUISON
    ルイソン

    LUISON  ルイソンは、巨大な狼に姿を変える男である。グアラニーの神様タウとケラナの7番目の未熟児の子供である。
     やせ細ってやつれた感じの男で、恥ずかしがりやで、臆病な性格である。火曜日、金曜日になると、真夜中家を出て森へ向かう。満月の光を浴びるとたちまちのうちに、ちぢれた毛、大きな黒い頭できらきらした目をもつ大狼に変わる。
     ルイソンは悲しそうにほえる犬たちを引き連れて、墓地に向かう。そして、死体を掘り返し食べてしまう。誰かに見つかって食べるのを邪魔されると、ルイソンはその人をわしづかみにして殺してしまう。
     この恐ろしい仕事が終わると、すでに夜明けになっており、犬いぬの大きな遠吠えとともに森に戻り人間に姿を変える。そして家に戻って普通の生活を続け、日常の仕事をするのである。
     ルイソンを殺すには金曜日に銀の弾を使って殺さなければならない。しかし、もし第一発目に失敗すると、ルイソンにかみつかれて、その人もまたルイソンになってしまうといわれている。

原文 C.H.Pテキストより
挿絵 Dana, Profesora escuela primaria de Villarrica
翻訳 過去の隊員名無しさん

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