スペイントホホ紀行 その1.

しょっぱなから予定変更・トホホな幕開け

 タクシどもがスペインに到着したのは現地時間で10月3日、日曜日の午後11時頃。その夜のホテルだけは日本から電話で予約してあったので問題はなく(ちなみに、風呂・トイレ付き2人部屋で5800ペセタ、約4500円)、翌4日の月曜日からいよいよ自分で手配しながら先に進んでいく、我々の無謀な個人旅行が幕を開けたのでございます。当初の予定では月曜日はマドリッド近郊のエル・エスコリアルというところにある絢爛豪華な宮殿を見学し、マドリッドに戻ってそのまま夜は夜行列車でスペイン南端の街アルヘシラスに向かおうという計画でございました。

 ルテ駅(北駅)で当日の寝台夜行列車の切符購入はあっさり成功。公衆電話でアルヘシラスのホテルを予約することにもかろうじて成功し(ちなみに、風呂・トイレ付き2人部屋で6500ペセタ、約5000円くらい)、我々はそのままノルテ駅でエル・エスコリアルまでの往復切符を2枚購入。駅員が乗り換えの駅をわざわざ路線図に記入して教えてくれたので、何の不安もなく列車に乗ってエル・エスコリアルに向かったわけでございます。ふふふ…水も漏らさぬいわんや&トホ妻のチミツな計画と行動。なかなか順調な滑り出しではございませんか。

 内でトホ妻はガイドブックを広げてエル・エスコリアルの駅を出てからの道順などを検討し始めたのでございますが、そこで彼女は突然「あっ!!」と叫ぶではありませんか。「何?」「…ほら…」トホ妻が指差すガイドブックのページにはくっきりと「エル・エスコリアル宮 月曜休」の文字。ががーん!

 こから深刻な顔をした二人の列車内での打合せが始まりました。この「深刻な打合せ」はその後スペインにいる間じゅう、何度も繰り返されることになるのですが、この時がまず最初の打合せだったのでございます。切符は往復ですでに買ってしまい、しかも列車にまで乗ってしまっているワケですが、目的地が休みでは仕方ありません。「次の駅で降りて戻るか?」「…それしかないわよね」ああ、何ということ。いわゆる「施設系観光物件」は月曜休みが多いことを忘れていた我々のズサンな計画はしょっぱなから早くも破綻してしまったのでございます。往復切符代は完全な無駄。せめて片道切符にしとけば良かった…トホホ。

map1 れなら今日はプラド美術館でも観に行こうか…待てよ、あーやっぱりプラドも月曜は休み…。それなら「施設系」ではなく「屋外系観光物件」なら良かろうというので、トホ妻がひねり出した提案が「アビラに行こう」というプランでございました。アビラという街はヨーロッパでも指折りの城壁が残っていることで有名な中世要塞都市でございまして、確かに月曜だからと言って城壁が消えてなくなるわけではございませんから、それではアビラ観光に変更するか、ということで話がほぼまとまったのでございます。

 ぁ、そこからまた一段と深刻な打合せです。仮にこれからアビラに行くにしても、今夜乗る夜行列車は決まってしまっているわけですから、それまでに絶対にマドリッドに戻って来なければなりません。しかも荷物はホテルに預けてある、どうしよう…もうこのあとのことは思い出すのもオックウになってまいります。

 京に置き換えてお話しすれば、我々はたとえば飯田橋のホテルを出て新宿に向かい、そこから青梅に向けて電車に乗ったら目的地が月曜休みであることに三鷹あたりで気が付き、三鷹からまた新宿に戻ったあと、そのまま東京駅に行って急遽変更した目的地である日光行きの列車の時刻を確認。急いで飯田橋のホテルに戻って荷物をピックアップし、それを持って今夜の夜行の始発駅である上野のロッカーに預け、かろうじて東京発・日光行の列車に上野から飛び乗った、という感じになりましょうか。いやはや、とんでもないハードな初日になってしまったのでございます。

 かし、かろうじて辿り着いた日光、あいや、アビラは中世の面影を色濃く残す街で、その城壁はさすがに一見の価値がございます。特に街の反対側のビューポイントから見たアビラの街の景観はそれは素晴らしいもので、朝からひたすら深刻な打合せと切符手配・時刻表調べを繰り返していた我々もようやく「観光客モード」に入ることが出来たのでございました。やれやれ…。

 9時半頃、アビラからマドリッドの夜行列車始発駅に戻ってきた我々は駅でゆっくりメシを食い、ロッカーに預けた荷物を取り出し、11時発のアルヘシラス行夜行寝台列車に乗り込んだのでございます。これでようやくホッとしました。初日は相当の予定変更を強いられましたが、明日からはまぁ大丈夫だろう…と思いつつ、寝台列車に揺られながらスペイン2晩目は過ぎていったのでございました。

 ころが翌朝、9時半にアルヘシラスに着くはずだった夜行列車は遅れに遅れ、着いたのは昼過ぎ。ああ何ということ。予定ではホテルのチェックインと翌日のモロッコ日帰りツアー予約を午前中にすませてしまい、正午の列車でロンダという街まで日帰りで行って来るはずだったのに、我々の計画はここでもまた粉砕されてしまったのでございます。結局その日はアルヘシラスで過ごすしかないわけでございますが、持参したガイドブックを見ると、アルヘシラスという街については「モロッコに行く人にとっては玄関口だが、街自体に見るべきものは何もない」と書いてあるのでございます。一体この「見るべきものは何もない」街で今日は何をしたら良いのでございましょう…トホホ。(→旅行記その2に続く)

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